NIGHT SCRAPS

今 https://note.com/star_gazer_

おいしいもののことをまた考える

昨日は張り切っておかずをたくさん作ってしまった。まいたけと人参のきんぴらと、大根とイカを煮たやつ、それに鶏のささ身と小松菜をバターで炒めたやつ。味の良しあしは一応おいておくとして、とにかく作る時間は至福だった。途中、指を怪我してすっごい痛…

夜も昼も

いま熱中して、ヴァージニア・ウルフの『自分ひとりの部屋』を読んでいる。おなじみの喫茶店でこの本を見つけて、すぐ手に取った。テーブルに置かれたアイスコーヒーのことを忘れるぐらい、内容に没頭した。グラスがじんわり汗をかき、テーブルを濡らした。…

町くらげ

ふと本屋に立ち寄って、目当ての雑誌がないことを確認してそこを出ると、外はもう薄暗くなっていた。遠くの空はかろうじて淡い青色をしていたけど、それさえ消え去りそうだった。侘しさを感じながら自転車に乗ろうとしたら、道に迷った男の人に話しかけられ…

忘れられないの

町に吹く空気が少し変わってから、大学のベンチで本を読むのが楽しかった。それは時にはマッカラーズの『結婚式のメンバー』だったし、サリンジャーの『フラニーとズーイ』や、『ムーミン谷の仲間たち』だったときもあった。後半の二つは読み終わっていなく…

桃色の風

春という季節に、別段いい思い出もない。例えばクラス替えだ。人間観察をするのが好きで「誰々と誰々が仲良くて、誰々はそうでもない」と考察ばかりして、自分はその輪に入るのが苦手だった。もう出来上がっている関係のなかに入って「僕も僕も」と主張する…

朝と抱擁

桜の開花が発表された日。久しぶりに温かなやさしさに包まれた日。古着屋さんでよさげな半袖シャツを見つけて、安かったけれどそれだけを買った。部屋に帰って来て着替えてみて、「うーん、いいなあ」と思ってまた脱いだ。スーパーで買った食材を冷蔵庫に詰…

ぽこぽこと、思考する(15)

・休みの日に限って、何かしないといけないような気がしてくる。空っぽの頭にどんどんと液体が流れ込んでくるみたいに、変な義務感が支配する。いやだ。かと言ってむつかしい本を広げてみても、頭がスカスカなのだから入るものがない。ただぼんやりとゲーム…

まぶしがりや

ずっと読みかけだった本をやっと読み終えた。カーソン・マッカラーズの『結婚式のメンバー』だ。1946年の小説を村上春樹さんが新訳したもので、カバー写真にはマッカラーズ自身の姿が写っている。物語は「緑色をした気の触れた夏のできごと」で、十二歳の少…

ポップ・ウイルス

そこには確かに星野源がいた。表情も判別できないぐらい遠い場所からだったけど、「目が合った!」なんて幻想も抱けないぐらいの場所からだったけど、確かに星野源は存在していた。最高の夜だった。 三月十日の博多は、天気予報通り雨だった。乗り物酔いで気…

花と棘

低気圧が過ぎ去って、温かい天気が来た。冷たい風の中で重ねられた温い手のような、やさしい天気だ。川面に光が跳ね、うっすらと赤らんだ梅の花がふわりと揺れた。古着屋に寄ったりハーフコートをクリーニングに出したり、またいつものように買い物をした。…

ひとり再考

他人からどう思われているのか気にしてしまう。自分への自信が足りないからか、それとも不安感が強いからかは分からないけど、人の視線で自分の行動を律している。今日も個人が経営している喫茶店に行って、ずうっと落ち着かなかった。「なんでサンドイッチ…

ささやかだけども

春休みに入ってから、本当にぐうたら極まりない生活を送っている。昼頃に起きてベッドの上でしばらくだらだら過ごす。ご飯を食べて図書館に行く。それでもやっぱりすぐ夕方が来て、夕飯を作ったりお風呂に浸かっているともう深夜だ。それからゲームに熱中し…

懐かしいって感じ

大学付近の家が壊され、更地になっていた。何度となく通ったその道で、家を見たこともあるはずだけど、どんな外観だったか想像しても全然浮かんでこない。「そこにあった」ことだけが確かで、それ以外はぼんやりしている。きっと違う雰囲気の家が建っても、…

まとめ(7)

まとめです。去年の年末から今年の二月までの文章を総括。自分の性格のように、明るいものと暗いものの差が結構顕著だと思います。 1.れんこんみたいに れんこんの穴を肯定するのはなかなかむつかしいことなんです。 r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com…

青春音痴

雨の中で鳩が地面をつついていた。工事現場の人たちが誰かの家を壊していた。大学には集中講義を受けている学生の姿がちらほらと。そんな風景を横切りながら、イヤホンからはナンバーガールが流れていた。車が雨を轢くやかましさを蹴っ飛ばすくらいのやかま…

ぽこぽこと、思考する(14)

・ゼミの課題として提出したレポートが添削された。心配していた割に直されたところは少なかったけど、やだなあって感じだ。一回「よし、完成」と安堵したのに欠点を指摘されてもう一回向き合わなきゃいけない。すぐ終わらせて自由になりたい。それでも「適…

しあわせ

将来イギリスに住みたいから英語を懸命に覚えている人がいて、本当にすごいなあと思う。「イギリスに住みたい」という願望を保ち続けているそのバイタリティを分けて欲しいし、英語力もちょっとばかり頂戴したい。英語を勉強していた頃があったけど、いつも…

ねむれメンヘラ

ときどき、自分がメンヘラのように厄介な存在になる。『山月記』では李徴が虎になったけれど、僕はメンヘラになるのだ。普段はぼぉーっとしているのに、そんな夜になったら承認欲求は肥大して、ひたすら満たされてないことへの恐怖感でいっぱいになる。誰か…

魔法かけて

本がそっと、紙の衣装をまとう。ぱりっとしているけれど大分ゆとりがありそうだ。お金を払いお釣りを受け取って、静かに本屋さんを出る。雨上がりのコンクリートを乾かす冷たい風が吹く。夕方だからお腹も空きはじめた。早く家に帰ってご飯を炊かなくちゃ。…

春と一緒に

雨が降った次の日の、雲一つない清らかな快晴が好きだ。ずいぶん空が高いなあと思って見上げたら、青い色ばかりがどこまでも続いている。自転車を漕いでみると、木々の隙間から日がさして、風が追い出されてくる。自然と気持ちいい気持ちになって、洗濯をす…

すべてを疑いたい夜に

人間関係が苦手だ。絶対切れないだろうと思っていた関係ほどするするとうまくいかなくなって、足掻こうとするぶん糸が絡まり、全部切らなくちゃいけなくなる。その「上手くいかないとき」が何回か続いて、自分に何か欠陥があるんだ、何か病めいたものがある…

ぽこぽこと、思考する(13)

・お酒を初めて買った。二十歳になった次の日、買いたいなあと思ってスーパーに出かけた。ビールと梅酒ソーダと、晩御飯の諸々を入れてお会計をした。年齢の確認されるかなあと想定して免許書を出す準備をしていたけど、なんにも聞かれずに済んだ。すごく寛…

ミルク

夜はまだずいぶん寒いんだと知った。疲労でとろとろになった頭が妙に心地よく、ひんやりした夜風もいい。外から帰ってきた人のかじかんだ手に触れられたようだ。おなかが空いて、スーパーで適当に食べ物をかごに入れる。レジはガラガラで、すんなりと会計を…

糸を垂らすだけさ

必ず渡らないといけない信号が、やけに長い。だいたいの人が、車が来ないのを確かめてそれを無視する。さあっと、静かに消えていく。僕はなんとなくぼけっと立って、信号が青に変わるのを待つ。気づくと、曲が一つ終わっている。なんでこんなに長いんだろう…

ぽこぽこと、思考する(12)

・偏頭痛というものはだいたい寝れば何とかなるのだが、今回のはしぶとい。前の学期末のときも、脳味噌を包帯で巻かれたみたいな気持ち悪さと、妙な吐き気を食らった。あの時はあんまり寝ていなかった気がするけれど、今はバリバリ寝て、頭が溶けるぐらい寝…

休日

ただ飯食って寝て、たまにこうして文章をひねり出す生活がずっと続けばいいのにと思う。料理しているときの、ぽっと自分がいなくなる感覚も一生続いてほしいな。自分の作ったカレーを食べて(まあまあだな)、全然知らないアメリカの30分ドラマを流し見しな…

モリッシーはずっと新しい

ゼミの研究として、イギリス・マンチェスター出身のミュージシャン、モリッシーについて調べてきた。調べる前からずっと好きな存在だったけれど、いろいろと知っていった今では特別な感情抜きに彼のことを見ることができない。調べてきたこと(既に語られて…

ボディー・ブロー

ときどき、予期しない所からボディーブローを食らう。本当に殴られるとかそういうことでは決してなく、心をぐっと鷲掴みされるみたいなことだ。それをちょっと比喩で言っているのだ。この間もツイッターで深沢七郎さんのことを知って、一気に興味を持ってし…

朧な爪

そういえば、今日は誰とも喋らなかった。大学生になってすぐは、誰かとすぐに仲良くなれるものだと思っていたから、そのことにすごく傷ついた。もの静かな部屋に佇む自分が憐れで仕方なかった。でも今は、そんなことを思い返すことも少ない。慣れというのは…

ぽこぽこと、思考する(11)

・人文学部で学んでいると言うと、「何してるの?」と訊かれることが多い。僕はどうしようもなくて「いろいろ」としか答えられない。文学や哲学、心理学や社会学なんかの幅広いことをやっているから、ときどき「何してるんだろう」と思う。結局、「何にも知…