NIGHT SCRAPS

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2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

プール

ふと思い出す人がいる。突然、風がシャツを揺らすようにふっとその人の顔や会話が現れるときがある。今日、何気なくツイッターを見ていたらそれが起こった。あ、あの人どうしてるんだろう、と。でも名前を打ち込んだって同じ名前の人がたくさんいて、どれが…

恋する人がいたら

夕方に外へ出るのはあまりないのだけど、今日はなんだかぶらぶらと出かけたくなってしまった。蜘蛛の糸が少し絡んだ自転車に乗って(蜘蛛の糸って除けるの億劫だし、気持ち悪いんだよねえ)、本屋さんへと漕いでいった。西の空はまだ明るく、雲には夕焼けの…

水槽

今朝からしとしとと雨が降っている。夏の名残りを感じさせていた最近の風とは違って、ずいぶん秋めいた、涼しい風が吹いていた。このあいだ新しく買ったジャケットがちょうどいい。牡丹色の傘をさして歩いた。イヤホンからはユーミンの音楽が流れている。 ま…

ふくろう通信 その二

r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com 以前の記事で紹介した、松任谷由実さんのことについて、もう一度書きたいなと思った。ここ数日、ユーミンの音楽ばかり聴いている。『MISSLIM』や『COBALT HOUR』なんかを繰り返しリピートして。でも改めてアルバムや…

エスケープ

生まれつきの乱視で、しかも近眼である。遠くのものはぼんやりと映るし、目の力を抜くと景色が割れてくる。だから部屋に黒く小さな生き物が現れたときも、最初はゴキブリかと思った。面倒だなあという思いでいっぱいになる。しかし眼鏡をかけてすぐにわかっ…

ふくろう通信 その一

最近聴いている音楽をどばーっと紹介しようと思う。今日は雨が降っていたので、特にすることもなく音楽を漁ってばかりいた。ここ最近気に入っているのは、ミツメというバンドだ。最初に良いなあと思ったのは、セダンという曲だ。インディーロックっぽい感じ…

田舎の生活

村上春樹さんが孤独の比喩として使われていた「井戸」というのが、妙にしっくりきている。深い深い井戸の底で静かに生活しているイメージが、絵になる。ときどきそこからは人々の温かい声が聞こえてきて、胸のあたりがずきずきと痛むのを感じる。でもその痛…

くせのうた

子供の頃から、爪を噛むくせが治らない。母親に「友達にばかにされるよ」と非難されても、どうしたって治らなかった。今だって。考え事をしてるとき、孤独なとき、僕の爪はあまり褒められたものではない。爪を噛むという行為は、ある種の自傷行為らしい。そ…

さよなら夏の日

雨が降りそうだった。でも、降らないようにも思えた。かすかな希望を信じて、僕は外に出た。秋の気配はあるけどまだ湿気が鬱陶しく、胴の部分にしがみついてくるような感覚があった。一応、家から傘を持ってきた。 図書館は歩いて10分ほどの距離だけど、身体…

だらだら坂

静かな空気の中に、小さなガラス片が混じっているような本。本棚から懐かしげに手に取ったのは、向田邦子さんの『思い出トランプ』だ。200ページに13編の物語が収められている。一つ一つが短いため、あっという間に読み終えられる。15分のドラマを見ている感…

フェルマータ

耳の奥で、男性と女性が中国語で話し続けている。ラジオの周波数が合っていないのか、時折それは恐ろしいくらい不安定になり、悪い夢でもみている気分になる。それでも耳を離せないのは、ちょっとした孤独感が心地いいからだろうか。たった一人で中国を訪れ…

キッズ・アー・オールライト

僕の実家(マンション)は、窓から大きな山が見えていた。春には紅をさし、夏には青々と輝き、秋には赤く燃え、冬には淋しい姿を見せる。両親がこの部屋を選んだのも、この景色を気に入ったのが理由の一つらしい。僕もこの窓からの景色が好きで、日が沈むの…

贅沢な余韻、美しさ

夜遅く、親が寝静まった暗い部屋で、僕は本を読んでいた。iPhoneのライトを巧みに使って、村上春樹の『スプートニクの恋人』を読んでいた。仰向けになり、腕を上げて本を持っていたので、すぐに二の腕あたりが痛んでいたけど、気にしなかった。天気予報やニ…