水槽

 今朝からしとしとと雨が降っている。夏の名残りを感じさせていた最近の風とは違って、ずいぶん秋めいた、涼しい風が吹いていた。このあいだ新しく買ったジャケットがちょうどいい。牡丹色の傘をさして歩いた。イヤホンからはユーミンの音楽が流れている。

 まだ新学期が始まっていないこともあって、校内に人影はさほどなかった。図書館も同じで、だいたいいつも埋まっている二階のテーブルもほとんど空いていた。...ふう。リュックサックから教科書を取り出す。新学期から始まる中国語中級Ⅱのために、復習しておこうと思ったのだ。中国語は、漢字を見ればだいたい意味を察することができるけど、音(ピンイン)だけだとあんまり分からない。はあ、むつかしいなあ。

 ふと周りを見ると、他のテーブルがグループで埋まってきていた。仲睦まじそうに言葉を交わしながら勉強する彼らを眺めていたら、一人、中国語を勉強している自分が急に恥ずかしくなってきた。もう、このくらいでいいか。荷物をすべて収めて僕は図書館を出た。雨が、やや激しくなっている。することもないし夕飯の準備でもしに行くか...と、僕はいつものお店へ向かった。今晩はカレーだ。雨の煙る道を歩いていた。故郷からこっちにやって来て度々思うのだけど、町によって時間の流れ方が違うのは本当だ。こちらの町は、ずいぶんゆっくりと、贅沢に流れている気がする。もちろんせかせかとクラクションを鳴らすドライバーもいるけれど、つい歩みを惜しんでしまうほど、空気が落ち着いている。

 ここは水の多い町で、道路わきには溝があり、排水や雨水が流れている。かなりの雨が降った日には溝いっぱいに雨水がたまり、あふれるんじゃないかと不安になるほどだ。ふと立ち止まった。滝のように水が落ち、ぽこぽこと音を立てて泡だっている様子に、なぜか惹きつけられた。それはまるで、水槽のろ過装置みたいに見えた。さくらももこさんのエッセイが思い出される。友達に借りたレコードを録音するためにグッピーの入っている水槽関係の電源をすべて切ってしまい、気づいたときにはすべてのグッピーが死んでしまっていた。もう一度電源を入れると、死んだグッピーがぐったりと浮かんだり沈んだりしていて、まるで生き返ったかのような光景だった...。

 帰省したときに、大学受験で解いた小論文の問題を久しぶりに読んだ。いま覚えているのはこんな文章だ。「人は25歳を越えると、新しいことに順応することが難しくなる」。そうなんだ..。25歳以上の人々の思考は、電源が止まった水槽みたいなものなのか?濁り、そのことにも気づかず、だらだらと泳ぐのだろうか?はっきりとした意識を持って、新しい、澄んだ水を取り入れないとなあ。

Boyfriend

Boyfriend

  • Mom
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes