田舎の生活

 村上春樹さんが孤独の比喩として使われていた「井戸」というのが、妙にしっくりきている。深い深い井戸の底で静かに生活しているイメージが、絵になる。ときどきそこからは人々の温かい声が聞こえてきて、胸のあたりがずきずきと痛むのを感じる。でもその痛みが成長の糧になると春樹さんも(たぶん)言っていたから、僕もつらさを肯定してみようと思う。

 今日、一人暮らしが再開された。昨夜はだいぶ憂鬱だった。先の見えない砂漠を前にしたような寂しさを感じていたけど、両親は普段通りがあがあと眠っていた。桑田佳祐さんのラジオを聞いたあと、明かりを消していつものように毛布にくるまった。朝、七時に目覚め、九時半の高速バスに乗り、二時間半揺られていた。駅のバスターミナルに着くとそこから路面電車に乗り、三十分ほど立って景色を眺めていた。大学前の停留所で降り、アパートまで歩いて行った。疲れた。

 ...懐かしい孤独だ。実家で暮らしていたときのものとは質の違う孤独。スタンドライトの柔らかい温もりを浴びながら、これを書いている。うあーー、一人暮らしってやっぱり疲れるなあ。肩のあたりが硬い。あと、キムチうどんが食べたい。うん。アパートは嘘のように静かで、虫の音しかしない。九月の半ばにしては今日は暑かったけれど、アパートに帰る途中でススキを見かけて、秋の情緒を味わった。奇妙な気候だと思った。

 心身共に疲れた日には、スピッツの音楽がしみわたる。音の一つ一つから滋養があふれだして、温泉に浸かっているような気分になる。最近は、「スカーレット」が本当にいい。赤いダッフルコートを着たマサムネさんが可愛い。そして何より、全ての音がやさしい。お茶漬けぐらいやさしい。


スピッツ / スカーレット

 次に「やさしいなあ」と感じるのは「冷たい頬」だ。...『フェイクファー』は基本やさしい気がする。アルバムジャケットからも、猫があくびしそうなくらいの温かさが伝ってくるくらいだ。


スピッツ / 冷たい頬

 MVがないけど、疲れたときに聴きたくなるのは、『三日月ロック』の「ガーベラ」、『オーロラになれなかった人のために』の「田舎の生活」、『花鳥風月』の「コスモス」...など。スピッツはもともとパンクだけど、井戸の底にまで行き渡る幸せもくれる。たぶん、新学期が始まってしばらくはスピッツに救われたり赦されたりするんだろう。新学期...、クラスの子としばらく会わなくてどう接してたか忘れて、ぎこちなかったなあ。なつかしいや。

田舎の生活

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