NIGHT SCRAPS

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2018-01-01から1年間の記事一覧

花束と陰りと

昔から暗いところが好きだった。木陰とか押し入れの中とか。日暮れても明りをつけずに本を読んでいたら、父が呆れて「目が悪くなるぞ」と言って立ち上がる、ということが度々あった。正直、薄暗いところで読んでいる方が落ち着けるのだけど。そういうじめじ…

Deadline

窓に結露が粒々と浮かんでいるのに気づいて外に出ると、ひやっとする空気が顔を撫でた。空もなんだか、透き通って見える。未だに日差しにはうんざりする温もりがあったけれど、秋から冬へと移行しているんだということは分かった。 今日は授業の課題をしてい…

空のことを考えよう

大学の新学期が始まった。無数の自転車が校内のそこかしこに止められ、その数だけ学生が歩いていたりじっとスマホの画面を眺めていたりしている。最悪なのはお昼時だ。食堂に並ぶ大蛇のような列とコンビニへと押し寄せる勢いで、一気に胃が痛くなりそうにな…

変わってるふりをしている

『カウボーイ・ビバップ』というアニメを観ている。98年から放送されていた作品で、山寺宏一さんや石塚運昇さん、林原めぐみさんなどすごい声優さんばかり出ている。何より、物語が渋くてダンディーで、痺れそうになる。カウボーイのお話なのにSFアニメだと…

プール

ふと思い出す人がいる。突然、風がシャツを揺らすようにふっとその人の顔や会話が現れるときがある。今日、何気なくツイッターを見ていたらそれが起こった。あ、あの人どうしてるんだろう、と。でも名前を打ち込んだって同じ名前の人がたくさんいて、どれが…

恋する人がいたら

夕方に外へ出るのはあまりないのだけど、今日はなんだかぶらぶらと出かけたくなってしまった。蜘蛛の糸が少し絡んだ自転車に乗って(蜘蛛の糸って除けるの億劫だし、気持ち悪いんだよねえ)、本屋さんへと漕いでいった。西の空はまだ明るく、雲には夕焼けの…

水槽

今朝からしとしとと雨が降っている。夏の名残りを感じさせていた最近の風とは違って、ずいぶん秋めいた、涼しい風が吹いていた。このあいだ新しく買ったジャケットがちょうどいい。牡丹色の傘をさして歩いた。イヤホンからはユーミンの音楽が流れている。 ま…

ふくろう通信 その二

r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com 以前の記事で紹介した、松任谷由実さんのことについて、もう一度書きたいなと思った。ここ数日、ユーミンの音楽ばかり聴いている。『MISSLIM』や『COBALT HOUR』なんかを繰り返しリピートして。でも改めてアルバムや…

エスケープ

生まれつきの乱視で、しかも近眼である。遠くのものはぼんやりと映るし、目の力を抜くと景色が割れてくる。だから部屋に黒く小さな生き物が現れたときも、最初はゴキブリかと思った。面倒だなあという思いでいっぱいになる。しかし眼鏡をかけてすぐにわかっ…

ふくろう通信 その一

最近聴いている音楽をどばーっと紹介しようと思う。今日は雨が降っていたので、特にすることもなく音楽を漁ってばかりいた。ここ最近気に入っているのは、ミツメというバンドだ。最初に良いなあと思ったのは、セダンという曲だ。インディーロックっぽい感じ…

田舎の生活

村上春樹さんが孤独の比喩として使われていた「井戸」というのが、妙にしっくりきている。深い深い井戸の底で静かに生活しているイメージが、絵になる。ときどきそこからは人々の温かい声が聞こえてきて、胸のあたりがずきずきと痛むのを感じる。でもその痛…

くせのうた

子供の頃から、爪を噛むくせが治らない。母親に「友達にばかにされるよ」と非難されても、どうしたって治らなかった。今だって。考え事をしてるとき、孤独なとき、僕の爪はあまり褒められたものではない。爪を噛むという行為は、ある種の自傷行為らしい。そ…

さよなら夏の日

雨が降りそうだった。でも、降らないようにも思えた。かすかな希望を信じて、僕は外に出た。秋の気配はあるけどまだ湿気が鬱陶しく、胴の部分にしがみついてくるような感覚があった。一応、家から傘を持ってきた。 図書館は歩いて10分ほどの距離だけど、身体…

だらだら坂

静かな空気の中に、小さなガラス片が混じっているような本。本棚から懐かしげに手に取ったのは、向田邦子さんの『思い出トランプ』だ。200ページに13編の物語が収められている。一つ一つが短いため、あっという間に読み終えられる。15分のドラマを見ている感…

フェルマータ

耳の奥で、男性と女性が中国語で話し続けている。ラジオの周波数が合っていないのか、時折それは恐ろしいくらい不安定になり、悪い夢でもみている気分になる。それでも耳を離せないのは、ちょっとした孤独感が心地いいからだろうか。たった一人で中国を訪れ…

キッズ・アー・オールライト

僕の実家(マンション)は、窓から大きな山が見えていた。春には紅をさし、夏には青々と輝き、秋には赤く燃え、冬には淋しい姿を見せる。両親がこの部屋を選んだのも、この景色を気に入ったのが理由の一つらしい。僕もこの窓からの景色が好きで、日が沈むの…

贅沢な余韻、美しさ

夜遅く、親が寝静まった暗い部屋で、僕は本を読んでいた。iPhoneのライトを巧みに使って、村上春樹の『スプートニクの恋人』を読んでいた。仰向けになり、腕を上げて本を持っていたので、すぐに二の腕あたりが痛んでいたけど、気にしなかった。天気予報やニ…

まとめ(3)

割の最近のものばかりですが、どれも個人的に好きなのでぜひ、ゆっくりと。 1.ばらばら 同じ人なんていないということ。 r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com 2.夏への扉 雨の中で夏が来るのを待っていた日々。 r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com …

はだかのこえ

夜になると虫の静かな鳴き声が聞こえてくる。時には窓にバタンと当たってきて、ベランダでぴーぴーと鳴くのでかなり気になるけど、彼らの音は夏の夜の風情を感じさせる。僕の住んでいるマンションは本当に静かだから、それしか聞こえてこない。そんな中、こ…

夕涼み

夏や冬など、暖かかったり寒かったりする時期に思うことだけど、適温というのがむつかしい。この季節だと、ついつい少し寒い設定にしてしまう。肌寒いのを感じて毛布にくるまっている自分の状況に、微笑んでしまう。あと、熱いお風呂に浸かったあとにアイス…

怒り

三角コーナーの底で腐った果物のような、汚い感情をここに吐露しようとしている。なんといえばいいのかむつかしいけど、何でもかんでもカテゴリー化させて言論を封じ込むのは嫌いだ。「女性だから」「〇〇反対の人だから...」と、個人を集団の中に詰め込んで…

DISC REVIEW vol.3

今日は、SMAPの『011 ス』と『012 VIVA AMIGOS!』について書こうと思う。二枚とも良い曲ばかりで、アイドルっぽさをあまり感じないから驚いた。いや、アイドルとしての人気が確固としたものだったからこそ、気ままに作れたということなのだろうか。何より、…

POKKA POKKA

扉を開けて外へ出るとすぐに、大きな音が轟いた。頭が真っ白になり、飛行機事故か?と思っていると、飛行機雲を流して5つの機体が遠くの空に消えていった。ただの飛行機ではない。自転車で町を走っていると、またあの音が響いて、周りの人も上を見上げてい…

後まわしな僕ら

掃除が苦手だ。ちょっとの汚れを放っておいて、それがだんだん積り積もっていく。この間もお風呂の掃除をしてかなり疲れた。スポンジで床や浴槽、扉の溝なんかを洗って、シャワーで流す。地味な作業だからこそじんわりと疲れも訪れて、「もっときれいに使っ…

まとめ(2)

1.かなりむつかしい問題 人の心が分からない人(僕)について。 r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com 2.離れた場所で同じ風を吸う ネット社会に救われています。 r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com 3.巣立つとき 母、その愛。 r46abfcfd77x7me05s…

トゥオブアス

目覚めると、部屋はもう薄暗くて、外から来る光も柔らかいものになっていた。頭が少し痛む。うーん、何時間眠っただろうか。スマートフォンを見るとまだ通話中だった。昨日の夜遅くから友だちと電話を始めて、現在の時刻は午後七時。もうずいぶん長いあいだ…

望郷巡り

けだるい気温の中、逃げるように大学を歩いた。ついさっきまでの緊張感がさっと去ったから、腰が抜けるような脱力感がふっと訪れた。試験の間はお腹が空いていたけど、終わった今はもうそれも居なくなっている。スーパーに寄って必要な分の買い物を済ませ、…

まとめ(1)

昔に書いた記事がずいぶんの下の方に埋没してしまったので、まとめて見やすくしようと思います。 1.Night Zombies 夜行性の自分のことについてあれこれ書きました。 r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com 2.私を構成する9枚 ツイッターのタグでやった自…

怪電波

雨雲は町から青さを奪うだけじゃなくて、心の中からも元気がすうっと薄れてしまう。昨夜はなかなか眠れず、ずっと動画を見たりしていた。一度軋んだリズムはなかなか戻すのはむつかしくて、そうして心身の体調を崩したりしてしまった。でもコップに溜まった…

ぽこぽこと、思考する(5)

・「すあだの宗教」という動画を見ていて、なんとなくわかる部分があると思った。自分は文章を書いているけれど、それを見る二人の自分がいる。一人は文章をまじまじと見つめて「うんうん、ここいいねえ」と褒めちぎる自分、もう一人は遠くで足を組んで眺め…