空のことを考えよう

 大学の新学期が始まった。無数の自転車が校内のそこかしこに止められ、その数だけ学生が歩いていたりじっとスマホの画面を眺めていたりしている。最悪なのはお昼時だ。食堂に並ぶ大蛇のような列とコンビニへと押し寄せる勢いで、一気に胃が痛くなりそうになる。戦場に降り立った兵士の気分でそこをすり抜けて、さっとパンを買う。そしてまた人波を泳ぎ切ると、あとは安楽が待っている。

 忙しい日々が再開された。無理でも規則正しい生活をしなければならないし、眠いなあと感じながら先生の話に耳を向けている。授業が始まると、自分の至らなさや無知ぶりをことごとく痛感する。例えば僕は高校で日本史選択をしたので、世界の歴史についてはチンプンカンプンだ。地理についても詳しくない。そういう場面に直面すると、もっと勉強しなきゃなあとゆううつになる。

 ゆううつになって帰るとき、ふと空を見上げるときがある。ほとんどが晴れたときの空だ。雲はどんな感じなのか、空の何割を占めているのか。そんなことがつい気になって首を傾ける。なにせ田舎の町は高い建物がないから、いつでも空を拝むことができる。僕にとってそれはとても幸運なことで、遠く開かれた青を見ると気分がぱっと軽くなるような気がするのだ。

 昨日の空は「ぶよぶよ」としていた。小さくて丸い雲が、整列しているように規則正しく空を埋めていて、奇妙なくらいだった。そんな空の様子に、なんとなく「ぶよぶよ」という形容詞を当てはめてみたのだ。形容詞を考えるのは面白い。「もわもわ」とか、「ふかふか」とかね。空について考えることはとてもくだらないけど、その時間はいろんなことを後回しにできる。

 できるなら一度は訪れてみたい国に、ギリシャがある。村上春樹さんが『ノルウェイの森』を書き始めた場所だし、『スプートニクの恋人』の舞台の一つでもある。写真で見る限りでもとても美しいと感じるし、その空気感に吸い寄せられる。どうしてこんなにいいんだろうと考えていたら、きっと色が素敵だからだろうという理由にたどり着いた。純白の建物と、鮮やかな青色の対比が気持ちいい。空の顔というのはだいたいどこでも同じだと思うけど、街並みは衣装のように、その表情の機微を伝える。

 村上春樹さんが読者からのメールに応える『村上さんのところ』を読んでいたら、次のことわざを知った。「どんな雲の裏地も明るく輝いている(Every cloud has a silver lining)」。今週末は雨の模様だけど、そんなときも太陽は輝いている......。ありがちなセンテンスだけど、きっと空を考えることは巡り巡って何かの役に立つんだろうなあ。

Dear Prudence

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