Deadline

 窓に結露が粒々と浮かんでいるのに気づいて外に出ると、ひやっとする空気が顔を撫でた。空もなんだか、透き通って見える。未だに日差しにはうんざりする温もりがあったけれど、秋から冬へと移行しているんだということは分かった。

 今日は授業の課題をしていて、気がつくと午後六時を過ぎていた。もう外は真っ暗になっていて、通り過ぎる人の顔もぼんやりとしていて分からない。昼の顔とは違う大学の姿に少しぞっとしながら、最近また気に入っているゴリラズを聴きながら帰った。途中で、制服を着た高校生らしき子たちを見かけて、つい自分の頃を思い出してしまった。

 高校三年生の今頃、ほぼ毎週末模試があった。英語のリスニングをほぼ意識のない頭で乗り越えたあと、自己採点をする。そうしていると、さっきまでは明るかったのにもう日暮れているのが見える。窓に外を眺める自分の姿が写る。自己採点をして、その点数にどうしても一喜一憂してしまう。どれだけやっても点数が上がらない状況に地団駄を踏みたくなったし、ぐんと下がったときには罪深い気分を味わった。しかも、自己採点を終えるとそれを先生に見せなければならない。進む足は重く、去る足は軽かった。

 ずんと沈んだ静けさが、教室を出るときから附いてくる。闇が垂れていて、目を凝らすと星の光も見つけられる。風が冷たくて、頬や耳、指の先が痛くなる。自転車を漕ぎだして道を進んでいくと、自分だけがぽつんといるような感覚になってきた。模試の点数でテンションがダダ下がっているから、そんな風になるのは当たり前だと思う...。今ぱっと思い出せるのは、黒い道路を濡らす赤信号の明かりだ。そして、家のドアを開けた途端に暖かくておいしそうな夕餉の匂いが包んだこと。

 話は変わるけれど、この頃から僕は、ラジオや音楽を聴きながらじゃないと眠れなくなっていた。暗闇や静寂の中にいると、いろんな不安がどんどん出てきてしまう(ような気がする)から、とりあえずイヤホンをして何も考えないようにする。それがすごく楽だと感じていた。だけどここ数日、意識的にアンプラグドして、何も聞かずただ目をつむるだけでも眠れることに気づいた。布団をかぶってじっとしていると、耳をすまさなくても虫の音が聞こえる。なんだかそれに安らぐのか、すっと眠りに落ちれる。

 よく考えればこれが一番自然な睡眠だ。眠るために何かに依存することは、かなり不自然だったのかもしれない。睡眠が落ち着くと、思考もそれに比例してくる。いや、もしかしたらこれも一時的なもので、すぐに情緒が不安定になる恐れがあるから、あんまり豪語できないんだけど。...あっという間に秋も冬も越えて、また歳を取る。毎日毎日、夜や静けさと一緒に。

 ※個人的な話はあんまり好きじゃない。それでも、たまにはしたくなるものだよね。