NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

骨の芯まで

刺すほどの冷たさ。それがずうっと心から離れなかった。だけど僕を乗せたバスがトンネルを抜け、次々と車を追い越していくのに合わせて強引に引き剥がされてしまった。熱い。氷のようなそれがくっついていたところが、ひりひりと痛んでいる。そして今度はこ…

リンゴとアルコール

二日酔いで目覚める。自分のことなど忘れて、馴れない体験にうつつを抜かしたせいだ。大して強いものを飲んだつもりはないけど。何かが吐き出されようと懸命に主張しながら、胸のあたりで引っかかってしまっている。それが余計に気持ち悪い。カーテンを開け…

まとめ(11)

・夜のはらいそ - NIGHT SCRAPS 「はらいそ」というのは、パラダイス、楽園といった意味です。だんだんと人々が寝静まる頃、ほろよいの方々が楽しくお喋りしている様子は、どこか楽園のように思えます。一方で、かんたんな格好で気兼ねなく過ごすのもまた好…

頭の中でハリネズミが暴れている。あるいは、バラの棘がちくちくと絡みついている。とにかく頭が痛い。部屋の明かりが目に刺さる。些細な音が耳を突く。誰かに「湯船に浸かるといい」と言われたけど、効果が見られたことはたぶん一度もない。結局一番効くの…

潮汐(Tide)

夢のくぐり方を間違えた。まだ空も白んでいない、早い時刻に目覚めてしまった。起き抜けのぼんやりした頭。布団の上のナマケモノ。薄暗い中で、枕元のペットボトルに手を伸ばす。唇のすき間から、そして汗腺から逃げていった水分を補いたい。日照りの町が雨…

ゆふれゐ

本屋。興味のある雑誌を手に取って紙を捲っていると、後ろに人の気配を感じる。見えないけれど確かにいて、見えないゆえに気になってしまう。雑誌の内容が頭に入らない。捲る手を止め、本を閉じる。それを元の場所に戻すと、さささと去る。妙に身体が重い。…

健やかなる

いつの間にか、凝った料理を見ると「誰が作るんだろう」と思うようになってしまった。入念な下ごしらえ、丁寧な調理。そもそもこれだけの食材と調味料を用意するのにいくらかかっているんだろう。余計なことばかり気になって料理がおいしいのかはどうでもよ…

やがて冬が

夜がだんだん早く来る。この窓から見える山の色も、近いうちに移ろいゆくはず。人々が身にまとうものも変化しはじめて、または新しい季節へ歩みだす。次の月へ、次の年へ。そして切ない鐘の音が鳴る。何も変わらぬまま、しかし沢山のことが変わってしまった…

沈黙は優しい

虫の音が気持ちいい。秋の予感がする。明るいような、さみしいような音色。夜になっても、町のどこかで生活の音がすると安心する。いろんな音、涼しい風が網戸から入りこんできて、僕の耳や素足に絡みつく。甘くふくらんだ夜の空気。僕はあくびをする。もう…

KIDS

家族三人で近所の道を歩く。夏の夕方、特別今日は涼しくて快い。鼠色の空からぱらぱらと小雨も降っていた。歩道橋を渡り、目当ての洋食屋に着くと、僕らは腰を下ろした。外で晩ご飯を食べるのなんて珍しい気がする。僕はオムライスを注文した。ふわふわの卵…

再上映

親がもう寝静まって、町全体も眠りについた。本当なら、僕もそういう状態でいなければならないのだろうけど、まだ目が冴えている。部屋の壁に備え付けられている、火災報知器が黄緑色の光を放っている。乱視の目でそれをぼうっと眺めていた。右へ左へと身体…

祭よ

暑いのに。肌が汗ばむ季節なのに。人はわざわざ町へ繰り出して群れをなす。その濁流はとても強大で、引き返すことは簡単じゃない。肩と肩がぶつかる。他人の湿った肌が触れる。さまざまな匂い入り乱れて、熱気がたちこめる。それでも人々は騒がしさの方へ誘…

刺青 / TATTOO

夏は容赦ない。刀を鞘から抜き、せっせと刃を研いでいる。そして歩く人々に向かって一気に刀を振り下ろす。僕の肌は無茶苦茶に傷ついて、傷口から透明な血があふれ出す。からだ中から水分が逃げていく。拭うハンカチは汚れていく。視線はどうしても涼しい場…

四畳半夜話

君と電話をしていて、いつの間にか眠りに落ちてしまうあの夜が愛おしい。いつまでも、こうやって夜を無駄にしてしまいたいと思う。言葉を交わして、頷いて、星の光がまた一つ消える。布団はどんどん柔らかくなって、淋しい人みたいに僕の身体をきつく抱きし…

黒い点が壁をするする伝っているのに気がついて、点がじっと落ち着いたところに近づいて軽く息を吹きかけてみる。僕の悪戯にその子は驚いて、焦った様子で壁をぴょんぴょん跳ねていく。その子のことはよく知らない。勝手にやって来て、いつの間にかどこかへ…

ここは水際

またいつものように、騒がしい雨音のあとに新しい季節が来た。その日は雷鳴もしていたかも知れない、もしかしたら。雨音が部屋に浸みこんでくる。それを聞きながら、いろいろと面倒なことをパソコンで整理していた。風の方もすごいから、ベランダに干してい…

夜のはらいそ

晩御飯を早く済ませ、シャワーを軽く浴びて、あとはだらしない恰好で適当に夜を過ごす。ごくごく普通だけど、なんて気持ちがいいんだろうと思う。ベッドに寝そべり、アイスコーヒーをからんからんと愛で、テレビでも観るといい。ときどき難しいことを考えて…

まとめ(10)

6月から7月末までのまとめ。曲紹介の方が楽しい。そろそろサブカル臭満載なライターにでも転身しようかな。 1.ろくでもなく僕ひとりで どうしようもないときはどうすりゃいいのよ。 r46abfcfd77x7me05se181.hatenablog.com ※プリファブ・スプライト「Bonny…

ぽこぽこと、思考する(18)

・ときどき、「あの文章のあの部分いいですね」と匿名で言われることがある。嬉しいなあって笑みがこぼれる反面、読まれてるんだなあってすごくビビる。毎日のアクセス数なんて大したことないし、話題になるような文章でもないけど、そんなものを眠たくなり…

アイスクリーム微熱

ぬるい空気と抱きあう日々ばかりだけど、ときどき恵まれて、傘も持たず出かける日がある。このあいだも久しぶりに路面電車に乗り、のんびりと時間を使って駅まで向かった。そのあいだ、外の暑い世界をぼうっと眺めては他の乗客のことをちらりと見て、また景…

メロディと言の葉

君がどうだったかはわからないけど、僕には詩を書いていた頃がある。詩と言っても歌詞だ。ほとんど韻は踏んでいないし、読み返すと恥ずかしさで熱を感じてしまう。家族には一つも見せたことがない。当時付き合っていた人には見せていた(送りつけていた、の…

ソーダフロート

午前四時に君から電話がかかってきた。ちょうど、隣の部屋からテレビの音が消え、しんと静かになったときだった。驚いてすぐに出てしまった。それにしても、どうして僕がまだ起きていることを君は分かっていたんだろう。晩御飯を食べたあと、のろのろとベッ…

タイトロープ

自分が生まれ育った町を頭の中で組み立てる。マンションの階段を下りて大きい道に出たのなら、東の方角に進んでいけば駅前のデパートや喫茶店が、北の方角に歩いていくとツタヤとか本屋さんとかあって、もう少し遠く進んでいくと三年通った高校がひっそり佇…

もう、曇り空さえうっとうしい。そのうち鼠色の雲が空を覆って大雨を降らすのが分かるからだ。おかげで洗濯物はなかなか乾かないし、靴の中は水槽のようになってしまう。もう何日晴れ間を見ていないだろう。自然と気分は落ち込んで、首元を締め付ける湿気に…

柳のような日々

お昼休みの教室は、明かりがないと薄暗い。蒸し暑い季節にはそれぐらいが丁度いいのかもしれない。ガラス戸を開けて、にぎやかな音と控えめな風を中へと誘う。窓という額縁の中に、初夏のスケッチが収まっている。優しい色が輝いている。同じゼミの女の子と…

さびしい群像

イギリスの労働者階級について調べているとき、日本語訳されている文献の少なさに困り果てた。英語ができたらなあ、と思ったし、それでも数少ない資料はレポートを書くのにかなり役立ってくれた。例えば労働者たちが暴動や抗議運動を行ったという事実は、多…

ゆっくり滑らかに夜は

昼に起きて、夜に眠れなくてそのまま朝になって、夕方で中途半端に眠って、また夜から朝に移り変わった。積み木が崩れた、その散乱したところにまた積み直しているような気分。いやすべて、自分の怠けがいけないのだけど。それでも疲れは溜まって、どこかで…

銀河

地上から遠く離れる感覚。宇宙に行く機会がない限り、あれだけ浮き上がれるのはあの時間ぐらいだろう。今でも、空を小さな光の点が移動しているのを見かけると、あの粒の中に人が何人も乗っているのかと不思議に思う。僕が初めて飛行機に乗ったのは高校の修…

冥利

都会に住みたいと思ったことがない。大きな街に住んでいる自分の姿が全く想像つかないし、人が多いとうんざりしてしまう性分だし、とにかく向いていないのだ。もちろん、観たい映画が自分の地域で上映しなかったり、好きなミュージシャンのライブで交通費が…

機械

家庭科の時間なんかで、昔の家電はこんな感じだったと写真付きで教えられる。洗濯板から洗濯機へ、テレビはモノクロからカラーへ。電話は公衆から個人のものになり、いろんな機能を内蔵するように。そういう変化を見るにつけ、未来のことをふと考える。今の…