NIGHT SCRAPS

今 https://note.com/star_gazer_

泳ぐ魚のように

 路面電車に乗るのが好きだ。大学の近くの停留所で乗って、席にふっと腰を下ろす。端の方に座って、ゆっくりと景色が移ってゆくのを眺める。他の乗客がどんな風に過ごしているのかも気になって、あの人はスマホを触っている、この人たちはおしゃべりしている、なんかをちらちらと見てしまう。片道300円、30分ほどの時間を経て、よく行く場所にたどり着く。

 JRの方だと同じ場所まで220円で済むし、時間もそれほどかからない。でもやっぱり路面電車を多用してしまう。それは、町と共存している感じが強くするのと、小さくて狭いというところが関係している気がする。スピッツに「運命の人」という名曲があるけど、その歌いだしはこうだ、「バスの揺れ方で人生の意味が分かった日曜日」。草野マサムネさんがバスに乗ったとき、いろんな年代の人がそこにいて、さまざまな人生が見えた気がしてこの歌詞を書かれたそうだ。僕も路面電車に乗っていて同じようなことを思う。サラリーマンらしき男性、大学生っぽい女の子、老夫婦、路面電車にいる多様な年代の人びとが同じ方向に向かっているのがとても不思議なのだ。そしてとても面白い。

 湿気の多い休日、本屋の帰りにまた路面電車に乗り込んだ。車内は微妙に混んでいて、僕は仕方なく、席には座らずに立って過ごすことにする。暑くて汗ばんだ肌に、窓から吹いてきた風がひんやり触れる。吊革を持つ手がじんわり痛くなってきて、持つ手を変える。買った本を読みたいけど、じっと我慢する。その心の端っこで、他の乗客のことや、移り変わる景色のことを思う。

 外を歩く人や自転車で移動する人にとって、路面電車は町並みをゆっくりと、そして威風堂々に泳ぐ魚のようだ。乗っている僕は魚の目になって、町を眺める。北側の席か南側の席かで見える景色は変わる。加えて、真反対に座っている人がいると景色を見るのが恥ずかしい。だから、立っていると景色が簡単に見えるから好きだ。町を見ていて別に面白いことなんてないけれど、なんとなく癖で眺めてしまう。

 電車に乗っていて思うのは、「何もしない」ということが人は苦手なんだなあということ。まっすぐ先を向きながら何もしないでおくとなんだか違和感を覚えてくる。(僕は好きだけど)他の人や景色をきょろきょろ見るのを変な感じがする。だからどうしてもスマホを触ってしまう。世の中にスマホがなかったら、今度は本や雑誌を手にするのだろうか。そういったシャイさを見るのも、僕は好きだ。

DISC REVIEW vol.2

 ■ YUKIうれしくって抱きあうよ

 少し前のアルバムだけど、大好きなアルバムだから紹介したい。この作品は2010年3月10日に発売され、オリコン週間で1位を獲得した。ブックレットにはYUKIさんの写真があって、このときは38歳ぐらいなのかな、ほんとに美しいなあと思う。このアルバムとその次の作品『megaphonic』は名盤だから是非聞いてみてほしい。

 僕が好きな理由は、アルバムとしての統一感がきっちりとしている点。一曲一曲の完成度が素晴らしい点。いつまでも鮮やかでずっと聞いていたいと思わせるメロディ。さまざまな色を見せるYUKIさんの声。こんなところだろうか。最初に好きになったのは表題曲で、サビにさしかかったときの心地よいカタルシスとちょっとエッチな歌詞がたまらなかった。それでアルバムを買ったわけだけど、どれもよかったあ。特に最高だったのは2曲目「プレゼント」から4曲目「ランデヴー」までの流れで、その部分だけ繰り返しても良いくらい。「プレゼント」は結構ロック。ジュディマリをちょっと思わせるような、ゴリゴリ押してゆく力がある。3曲目の「COSMIC BOX」は、歌詞が不思議でよくわかんないけどとにかくかっこよくて惚れ惚れしてしまう。題名の通りコズミックなメロディとストレートな歌声が混ざり合ってとても絶妙な調和を生み出しちゃっている。「ランデヴー」はロミオとジュリエットが題材になっている歌詞だ。YUKIさんの歌詞で「僕」が一人称なのはちょっと気になって読み込む。恋をする男の子のもやもやとそれをパッと弾けさせる純情が「あ、可愛い」と思わせるなあ。

 この曲以外も大好きだけど、とびきりいいなと感じるのは12曲目の「同じ手」だ。YUKIさんがどんな気持ちで書いたのか分からない。ギター一本というシンプルな音と淡い歌い方が哀しくって、布団に寝そべって何回も聴いてじんわり泣きそうになる。そうしてラストの「夜が来る」がやってくる。夢まで落ちて、また「朝が来る」。「一日」という一つのテーマ性がこのアルバムをぎゅっと引き締めている。

 こう言ってしまうと失礼に当たるかもしれないけど、僕は地味なアルバムが好きなのかもしれない。「地味な」というか、生活の匂いがするというか。星野源さんの曲が好きなのも「ポップなのにちゃんと食卓やちゃぶ台が似合うところ」がすごいと思うからだ。『うれしくって抱きあうよ』も、いつものYUKIさんとは少し違う。公園の砂利だとか、風で匂ってくるシャツの薫り、暗い道ににじむ食卓の明かり。そんなものが目に映る。10年経っても鮮やかな景色が広がっていると思う。 

うれしくって抱きあうよ

うれしくって抱きあうよ

 

 

うれしくって抱きあうよ

うれしくって抱きあうよ

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街へ出よう、すぐ寝よう

 先週の休日はゼミのあれこれでつぶれてしまって、どこにも行けずじまいだった。だから昨日と今日は自転車でぶらぶらしてきた。ちょっとそこまでと思っていたけど、なぜか遠出してしまって疲れた。体育で体を動かさなくなってからは自分で動かなきゃぶくぶく太ってしまうから気をつけなきゃなあ。大人になって醜くはなりたくないし。

 ずっと「行ってみなきゃ」と思っていたイオンに行ってみた。本屋さんはそこまですごくはなかったけど、HMVはかなり内容がしっかりしていて驚いた。最近SMAPにハマっていてそこを見てみたらシングルが殆ど揃っていた。大好きな「俺たちに明日はある」や「さかさまの空」、「華麗なる逆襲」もあって、ゾクゾクした。「ある」ということは素晴らしいです。いっつも「やっぱりないよねえ」というのを経験してるから、ただそこにあるだけで感動してしまう。ceroSAKEROCKのアルバムも置いてあって、いちいち目を輝かせてしまった。あと、Grobal WorkやNico and...なんかもいろいろ見て、これかっこいいなあとか思いながら値段を見て微笑んでしまったりした。でも、お金に余裕ができたときに必ずまた来ようと思った。かなりの距離を、しかも炎天下のなか自転車を走らせたから、時計をしていたところだけ白くなっていた。途中から、まずいなあと思って眼鏡を外した。耐えられなくなってジュースを買って飲んだ。アンバサ。ほんのり甘いやさしさと冷たさが嬉しかった。そうして帰ってきた。

 土曜日の深夜から友達と長電話をして夜更かししたから、朝の7時から眠ってお昼に目が覚めた。簡単に食事を済ませて、身支度をして出かけた。グーグルで調べて驚いたのだけど、近所に本屋があるらしい。今まで出かけたことのない方角にあるらしくって、ワクワクしながら自転車を漕いだ。あった。普通の大きな本屋さんで、長い年月を感じさせる外観だった。うん、静かで独特な空気を空間がまとっている。ときどき子供がはしゃぐ声がして、お母さんの重たそうな声がそれにつづく。おじさんが椅子に座って雑誌を読んでいる。立ち読みしてる大人の人が何人か。店員さんは三人ぐらいで、二十代のアルバイトらしき男性。ここで一番偉そうな女性と、バイトとも社員とも見える女性。あ、そうだ。僕は本を探していたのだった。ポール・オースターの『偶然の音楽』。やはり、それは本棚にはなかった。バイトっぽい男性に声をかける。本の注文って可能ですか。ええ、可能ですよ、どちらの本をお求めですか?あ、ポールオースターの...。僕の言葉を書きとる男性のメモには「ホオウル」と書いてあって、「あ、ポールです」と言うのが恥ずかしかった。そういえばこの間牛丼屋さんに行ったときも並盛を頼んだのに大盛りだと聞こえたらしくって急いで訂正したなあ。でもちゃんと注文はできて、一つ楽しみができてよかった。

 帰ってじっとすると途端に疲れが姿を現す。明日からまた一週間が始まるし、早く寝なくちゃね。そう言いながらPUBGモバイルやっちゃいそう。

DISC REVIEW vol.1

 cero 『POLY LIFE MULTI SOUL』

 待ってました、ceroの三年ぶりのアルバム。2016年に発売されたシングル「街の報せ」やキリンビールのCMに書き下ろされた新曲「陸のうえの晩餐」は収録されず、すべてが完璧な新曲となっている。もう僕の中で今年のベストに入っているんだけど、聞けば聞くほどメロディが頭に残ってゆく。とってもきれいで精錬された音や詩なのに、どこか血生臭さを感じる。ときには朝日のようにきらびやかなのに、突如暗い地下に突き落とされる。すべてが夢のように、酔狂のように思える。

 1曲目の「Modern Steps」に出てくる「かわわかれわだれ」というフレーズが他の曲でも使われているけれど、これは「川は枯れ」「別れは誰」「誰かは別れ」という複数の意味を重ねたものになっている。このような言葉遊びやサウンドでの「遊び」は、より深い世界、より鮮やかな世界へするりといざなってくれる。個人的にいいなあと思ったのは、8曲目「Double Exposure」と9曲目「レテの子」だ。「Double~」が好きな理由は、特に盛り上がるところがないからで、スピッツの「田舎の生活」とかサカナクションの「ティーンエイジ」も同じ理由で好きだ。ずうっと眠り続けているような、幻の中で暖められているような感覚がする。そこから「レテの子」に入る。さっきまでの眠りから醒めたあとの、祭りのときのざわざわとした高揚感。リズムに合わせて体を動かしてしまう。「レテ」ってなんだ、と僕は思った。どうやらギリシア神話と関係があるみたい。古代ギリシア人の一部は、転生のまえにレテの川の水を飲まされるから人は前世の記憶を失うのだと信じていた。むつかしい話だなあ。

 他のアルバムと比べるのは失礼だけど、小沢健二さんの『Eclectic』やサカナクションの『sakanaction』のようだなと感じた。もちろん、ceroじゃないとこれは作れなかったと思う。だけども、同じくR&Bやブラックミュージックの影響を受けた『Eclectic』のようなリズム、踊れる音楽なのに土の匂いや生臭さのするサウンド。とても新鮮に聞こえるけれどきちんと音楽の系譜の中の一つであることが、とってもすてきだ。とにかく一度聞いてほしい、「ん?」と思った人は、もう一度聴いてほしい。万華鏡のようにぱらぱらと切り替わる世界を感じると思う。それにしても、「陸のうえの晩餐」も入れてほしかったなあ。『SPACY』らへんの山下達郎さんのサウンドのようで好きだったから。でも、これで十分満足です、何回も聴きます。

cero / POLY LIFE MULTI SOUL 特設サイト

POLY LIFE MULTI SOUL (通常盤)

POLY LIFE MULTI SOUL (通常盤)

 

 

Double Exposure

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俺たちに明日はある

 今日、大学である議論をした。なにかというと、新渡戸稲造の『武士道』から学ぶ意義とは、ということだ。「そんなものいちいち議論してどうなるんだよ、もっと違うことを話し合えよ」と言われそうだけど、楽しいですよ、案外。『武士道』とは、武士の時代の倫理観や重んじられていたもの(仁や義など)を新渡戸稲造がまとめたものだ。僕が思ったことは、倫理観というのは説明がしにくいものだ(「どうして人をころしちゃいけないの?」とか「どうして親を大切にしないといけないの?」とか)、だからそういう倫理観のルーツを知ることは大切だろう、ということだ。

 いろんなグループが発表する中で驚いたのは、「今の時代は愛が薄れていて...」だとか「インターネットが普及して人間関係が希薄になって...」という意見で、昔のようになるべきだろうとまとまっていた。ちょっと疑問なんだけど、昔の人って今の人の何倍愛に溢れていたんだろう、昔の人はどれほど人間関係を密にしていたんだろう。僕は、インターネットというもので「人と繋がりたい」と思う心はきっと悪いものじゃない気がするんだけどなあ。それに、『武士道』の精神が意地悪されて「ブラック企業」だとか「いじめ」とかの問題が起こっているような気がしなくもないんだけど、どうなんだろう。みんなは「今に対する悲観」をよくしていたけど、どうしてもその中で美化される過去がどうも疑問に思えてしまう。

 だって、ある日突然「今」が悪くなるわけないでしょう。‘‘最近の’’お年寄りはよく「最近の若者は...」と言う。僕の親に聞いてみたら「別に何も思わないけどね」と言っていたから、一部のお年寄りの意見をクローズアップされているのかもしれないけど、今の若者に対する「俺たちが若い頃はなあ...」というノスタルジアを伴った視線は、なんだか不愉快だ。今の若者を生み出したのはその親御さんだし、その親御さんを生み出したのは...。つまり、自分たちが作った時代の流れが今の若者なんだと思う。

 昭和の時代を描いた映画は、どこか「あの時代はよかった」というメッセージをはらむ。とあるCMで、「ライバルは、1964年」というコピーが使われていた。つまり、「あの頃は笑顔や愛や心の豊かさがたくさんあった」ということだ。このようなものを見る度に、ナニコレ?と思う。今はそんなに悪い時代かな?すごく素敵で、すぐに好きになってしまう人がたくさんいるけどなあ。面白くて繊細で、怠け者で不器用な、そんな人がまだまだ輝いている。いろんなところから今を見なくちゃね。

巣立つとき

 今、大学の自販機でカフェオレを買って、ちびちび飲みながら書いてます。昨日はほんと偏頭痛で寝っぱなしでした。ご飯は食べて水分もきちんと摂りましたが、季節の変わり目だからかな。体がやられたっぽいです。今はもう回復いたしました。でも、高校とかと違って休んでも(昨日はもともと授業が入ってなかったけど)特に誰にも迷惑かけないのが大学の良いところです。会社だと一人抜けるだけで全体の仕事も増えるしね。

 変わって今日は、僕の母の誕生日だ。朝一番にメールをして「覚えてくれとったんやね、ありがとう」みたいなやり取りをした。僕は実家を離れているので、こういうときに「はい、これ」とプレゼントができない。が、春休みで帰省したときにきちんとケーキを買ってあげた。たしか、母にはモンブランを、(ついでに)父にはイチゴのショートケーキを選んだかな。なんだか照れ臭いけど、こういうときにしか何かをあげられないのだ。仕方ない。

 僕が一人暮らしを始めてから、向こうは結構静からしい。父はテレビを独占しているし、母は母で家事で忙しい。自然と会話が少なくなる。僕がいたときは母とまあまあ会話していたので、そりゃそうかという気もする。この間帰省した時も「あんたが帰ってくる前日まで喧嘩しとった」と言われた。僕は「何十年も一緒にいてまだ喧嘩できるだけいいんじゃないの」と返したけど、どうなんだろうね。今だから笑って書けることなんだけど、一人暮らしを始めて数日はほんとぽつんとしたものだった。おしゃべりな母もいないしテレビに向かってぶつぶつ言う父もいない。ペットのハムスターもか。とつぜん一人っきりの部屋に放り出されたような気分になって母に「一人暮らしって寂しいね」とメールすると、震えた声で電話がかかってきた。

 大学一年の六月ごろ、帰省するタイミングがあって、その夜家族で回転寿司に行くことになった。そこで、母が精神的にちょっとまいっていて、今は薬を飲んでいると言われた。たしかに、大学受験やそれに関するあれこれで家族全体が疲れ切っていた感じがあった。母はもともと心配性な性質だった。僕が一人で生活することに対してかなり不安を抱えていたのだと思う。薬の効果もあって、久しぶりに会う母は前より元気を取り戻している感じがした。そしてゴールデンウィークに会った母は、ドラえもんのようにお腹をパンパンにしていた。そのことで三人で笑った。

 巣立つということは、やっぱり寂しさや恋しさや、一方で解放感なんかを感じることだと思う。母は、ある程度「僕の面倒を見る」ということから解放されたわけだ。僕が一人暮らしを決意したのは、大学受験においてたびたび母と父が揉める瞬間を同じ空間で見て「気まずいなあ」と思っていたことが一つなんだけど、そういうのも関係なくなったし。どうせ、子供はいつか親の元から飛んでいかなくちゃいけない。いろんなものを一回なくして、自分の足で歩まないといけない(たぶん)。でも、「子供」には変わりないよ?「俺はもう子供じゃないんだよ」とたびたび聞くけど、親にとってはやっぱり「子供」だしね。そういう点では、なるべく迷惑かけないように頑張らないとなあと思う。では、思い出話は、ここらへんで。

ぼくの好きな音楽 Vol.1

 ここ最近、音楽のことについてあまり書いてないような気がしたので、好きな音楽についてあれこれくだらないことを書こうと思います。今日は松任谷由実さんについてです。

 宮崎駿監督の『風立ちぬ』が公開されたのが2013年ということは、もう5年経ったんですね、早い。僕はそこでユーミンの「ひこうき雲」を聴いて、ほんとうにいい曲だなあと思った。そこでアルバムを買おうと調べてみると、ベストアルバム「日本の恋と、ユーミンと。」に入っていることが分かったので、早速購入して聴きまくった(実は、ジブリのプロデューサー鈴木敏夫さんはこのベストを聴いて『風立ちぬ』の主題歌に「ひこうき雲」を使ってみては、と思ったそうだ)。ベストに入っている曲はすべてよかった。「やさしさに包まれたなら」、「守ってあげたい」、「卒業写真」、「あの日にかえりたい」、「中央フリーウェイ」...、すべて書ききれないほど名曲ぞろいです。僕がいちばん好きな時代は荒井由実から松任谷由実になって少し経った頃だ。『時のないホテル』から『SURF & SNOW』に昇華したあのカタルシスも、『昨晩お会いしましょう』の絶妙な空気感も、大好きだ。荒井由実時代は好きだけど松任谷由実になってからは...という人もいるけれど僕はむしろ逆だ。

 たぶん音楽の歴史において、ユーミンが現れる以前と以後で線が引けるような気がする。それまでの女性歌手は、ユーミンのようなカラッとしたストレートな歌い方はしなかった。はっきり言って、ユーミンの歌い方の方が怖さがはっきりと表れる。「真珠のピアス」という曲があるのだけど、歌詞の内容は「彼氏と別れた女が、彼のベッドの下に真珠のピアスを片方隠しておく」というもので、すごいポップな曲調でこれが歌われる。しかもカラッとした声で。ここで怖さがふっと伝わってくる。きっと初めて聴いた女子は雷に打たれたような衝撃を覚えたろうなあ。

PEARL PIERCE

 いちばん好きな歌は、1979年のアルバム『悲しいほどお天気』に入っている「緑の町に舞い降りて」。宮沢賢治の世界観に影響を受けた歌詞と、荒井由実時代のようなメロディがとても心地よい。ユーミンの強さって、『ダイアモンドダストが消えぬまに』に代表される「都会っぽさ」と、「緑の町に舞い降りて」や「瞳を閉じて」などに現れる「日本の原風景」を両方描けることだと思う。ユーミンの歌は日本のどこでもきちんと響く気がする。

悲しいほどお天気

 この間出たベストもオリコンで一位になっていて驚いた。そういえば、毎週金曜日に放送していていつもは聞けないラジオを、夏休みに聞いてたりしたなあ。アルバム揃えようと思ったけど30枚ぐらいあるのに負けて途中でやめちゃったな。『COBALT HOUR』とか『DAWN PURPLE』とか欲しいんだけどね。お金に余裕があったら揃えていこうかな。

ユーミンからの、恋のうた。(通常盤)(3CD)

 とりあえず、松任谷由実さんについてはここまで(あまりにも歴史が多すぎてとても書ききれません)。また違う音楽について話したいです。