DISC REVIEW vol.1

 cero 『POLY LIFE MULTI SOUL』

 待ってました、ceroの三年ぶりのアルバム。2016年に発売されたシングル「街の報せ」やキリンビールのCMに書き下ろされた新曲「陸のうえの晩餐」は収録されず、すべてが完璧な新曲となっている。もう僕の中で今年のベストに入っているんだけど、聞けば聞くほどメロディが頭に残ってゆく。とってもきれいで精錬された音や詩なのに、どこか血生臭さを感じる。ときには朝日のようにきらびやかなのに、突如暗い地下に突き落とされる。すべてが夢のように、酔狂のように思える。

 1曲目の「Modern Steps」に出てくる「かわわかれわだれ」というフレーズが他の曲でも使われているけれど、これは「川は枯れ」「別れは誰」「誰かは別れ」という複数の意味を重ねたものになっている。このような言葉遊びやサウンドでの「遊び」は、より深い世界、より鮮やかな世界へするりといざなってくれる。個人的にいいなあと思ったのは、8曲目「Double Exposure」と9曲目「レテの子」だ。「Double~」が好きな理由は、特に盛り上がるところがないからで、スピッツの「田舎の生活」とかサカナクションの「ティーンエイジ」も同じ理由で好きだ。ずうっと眠り続けているような、幻の中で暖められているような感覚がする。そこから「レテの子」に入る。さっきまでの眠りから醒めたあとの、祭りのときのざわざわとした高揚感。リズムに合わせて体を動かしてしまう。「レテ」ってなんだ、と僕は思った。どうやらギリシア神話と関係があるみたい。古代ギリシア人の一部は、転生のまえにレテの川の水を飲まされるから人は前世の記憶を失うのだと信じていた。むつかしい話だなあ。

 他のアルバムと比べるのは失礼だけど、小沢健二さんの『Eclectic』やサカナクションの『sakanaction』のようだなと感じた。もちろん、ceroじゃないとこれは作れなかったと思う。だけども、同じくR&Bやブラックミュージックの影響を受けた『Eclectic』のようなリズム、踊れる音楽なのに土の匂いや生臭さのするサウンド。とても新鮮に聞こえるけれどきちんと音楽の系譜の中の一つであることが、とってもすてきだ。とにかく一度聞いてほしい、「ん?」と思った人は、もう一度聴いてほしい。万華鏡のようにぱらぱらと切り替わる世界を感じると思う。それにしても、「陸のうえの晩餐」も入れてほしかったなあ。『SPACY』らへんの山下達郎さんのサウンドのようで好きだったから。でも、これで十分満足です、何回も聴きます。

cero / POLY LIFE MULTI SOUL 特設サイト

POLY LIFE MULTI SOUL (通常盤)

POLY LIFE MULTI SOUL (通常盤)

 

 

Double Exposure

Double Exposure

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