DISC REVIEW vol.2

 ■ YUKIうれしくって抱きあうよ

 少し前のアルバムだけど、大好きなアルバムだから紹介したい。この作品は2010年3月10日に発売され、オリコン週間で1位を獲得した。ブックレットにはYUKIさんの写真があって、このときは38歳ぐらいなのかな、ほんとに美しいなあと思う。このアルバムとその次の作品『megaphonic』は名盤だから是非聞いてみてほしい。

 僕が好きな理由は、アルバムとしての統一感がきっちりとしている点。一曲一曲の完成度が素晴らしい点。いつまでも鮮やかでずっと聞いていたいと思わせるメロディ。さまざまな色を見せるYUKIさんの声。こんなところだろうか。最初に好きになったのは表題曲で、サビにさしかかったときの心地よいカタルシスとちょっとエッチな歌詞がたまらなかった。それでアルバムを買ったわけだけど、どれもよかったあ。特に最高だったのは2曲目「プレゼント」から4曲目「ランデヴー」までの流れで、その部分だけ繰り返しても良いくらい。「プレゼント」は結構ロック。ジュディマリをちょっと思わせるような、ゴリゴリ押してゆく力がある。3曲目の「COSMIC BOX」は、歌詞が不思議でよくわかんないけどとにかくかっこよくて惚れ惚れしてしまう。題名の通りコズミックなメロディとストレートな歌声が混ざり合ってとても絶妙な調和を生み出しちゃっている。「ランデヴー」はロミオとジュリエットが題材になっている歌詞だ。YUKIさんの歌詞で「僕」が一人称なのはちょっと気になって読み込む。恋をする男の子のもやもやとそれをパッと弾けさせる純情が「あ、可愛い」と思わせるなあ。

 この曲以外も大好きだけど、とびきりいいなと感じるのは12曲目の「同じ手」だ。YUKIさんがどんな気持ちで書いたのか分からない。ギター一本というシンプルな音と淡い歌い方が哀しくって、布団に寝そべって何回も聴いてじんわり泣きそうになる。そうしてラストの「夜が来る」がやってくる。夢まで落ちて、また「朝が来る」。「一日」という一つのテーマ性がこのアルバムをぎゅっと引き締めている。

 こう言ってしまうと失礼に当たるかもしれないけど、僕は地味なアルバムが好きなのかもしれない。「地味な」というか、生活の匂いがするというか。星野源さんの曲が好きなのも「ポップなのにちゃんと食卓やちゃぶ台が似合うところ」がすごいと思うからだ。『うれしくって抱きあうよ』も、いつものYUKIさんとは少し違う。公園の砂利だとか、風で匂ってくるシャツの薫り、暗い道ににじむ食卓の明かり。そんなものが目に映る。10年経っても鮮やかな景色が広がっていると思う。 

うれしくって抱きあうよ

うれしくって抱きあうよ

 

 

うれしくって抱きあうよ

うれしくって抱きあうよ

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