時間がたてば分かる

 自分のなかに、矛盾を見つける瞬間が幾度とある。公然と偏見を口にする人を見かけたとき、怒りを感じると同時に「自分もそんなに変わりはしないんじゃないか、この人を責められるほど自分は偉くはないはずだ」という考えも浮かんでくる。一人でいることが好きなのに、「人と関わることは重要だ」とも思う。心を清めようとする水と、いつまで経っても消えない汚れが共存している。

 けどここ数日、「矛盾があって然るべきときもあるんじゃないか」と考えるようになった。もし矛盾を失くそうとした場合、すごく極端な人間になってしまうような気がする。一人が好きなのを貫き通せば一生他人と関わらないし、人とずっと関わっていようとしたら「一人が好きな自分」が悲鳴を上げる。ずっときれいごとを言えば嘘くさいし、心が汚れたままならば見るに堪えない。矛盾が必要なとき、矛盾によって適当な均衡が取れているときがきっとある。

 「そのままじゃいけないようで、実はそのままにしておいた方がいいこと」って、意外とあるんじゃないかな。例えば、わからない、ということ。宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』を観たとき、なぜだかわからないが涙がこぼれた。どうしてだろうとずっと考えているけれど、今も不思議なままだ。このまま大人になれば、少しくらいは分かるかもしれない。そう思いながら、「わからない」という感情をずうっと抱いている。難しい本を読むのもそうだ。中学のときにむつかしいと思っていた夏目漱石の文章が、最近読むとちょっと分かるようになっていた。まず読んでみて、「わからない」と放置していたことは、別に悪いことじゃないなと思う。

 宇多田ヒカルさんの1stアルバム『First Love』の中で一番好きな歌、「time wil tell」。15歳の少女が「時間がたてばわかる」「だからそんなあせらなくたっていい」と歌っているのを、当時の人たちはどんな気持ちで聴いていたんだろう。早熟した才能と世界観、その歌声。「時間がたてばわかる」ということを若くして分かっているのがまず驚きだし、それが心地よいビートに乗り、ポップなパッケージで届けられたのもすごいことのように思う。

 そう、何事も時間が経てばわかるはずだ。だから焦って決断を急いだり、オチをつけてしまわずに、そのまま放置しておけばいいのだ。いや、答えがはっきりと決まりきっているものは、問いを解かないと0点になってしまうけどね。答えが決まっていることなんて大したことではない。答えがないかもしれない問いに対峙するとき、まずは一旦放っておくことも鍵になるんじゃないか。ぽいっ、とね。 

time will tell

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