NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

ゆっくり滑らかに夜は

 昼に起きて、夜に眠れなくてそのまま朝になって、夕方で中途半端に眠って、また夜から朝に移り変わった。積み木が崩れた、その散乱したところにまた積み直しているような気分。いやすべて、自分の怠けがいけないのだけど。それでも疲れは溜まって、どこかで発散したかったから、午後の授業のあと喫茶店に向かった。

 そこでの時間は小さな贅沢だ。料理をじっくり噛んで味わい、本を黙々と読みふける。ジャズのレコードの音と、ときどき路面電車が通り過ぎる音。氷が小さくなるときの「からん」という涼しい音。それに溶け込むように差し込まれる、隣の席の男女の会話。そうやって夜の空気がどんどん膨らんでいく。深く黙り込んだ言葉の一つ一つを、紙から掬って舌に乗せる。知らない味、愛おしい味。さっきまであった、刺すような頭の痛みはどこかに行って、甘い香りが広がっていた。

 ひび割れ、その隙間から何かがこぼれ、壊れそうになりながら、ずっと欠けた部分を補う日々。疲れていると、ほんの些細なことをするのもすごく億劫なことに思えてしまう。だからほんと、コツコツ地道にこなせる人はすごい。なまけものな僕は、こうやってたまに休まないと、一週間を乗り切るのも難しいのだ。

 また本を買ってしまった。読んでいない本が積まれるたび、もどかしい気持ちも増していく。あの本を開いて、そのあと違う本に目を通す。少しページを進めてもすぐに眠りにつかないといけない。だけどそれも悪くないかもしれないと、帰る道の途中で思った。濃い青の空に灰色が混じって暮れていく。読みたい言葉の一つ一つを、ぜんぶ読み切れるか分からない。取りこぼし、忘れてしまう。それでも今日も、少しずつ新しい秘密を手にして、その喜びを抱えていくのだ。

 こうやって小さな贅沢のことを思い出しながらも夜はゆっくり滑らかに下降していて、文章を考えている頭はもう一方で「あれもしないと、これもあった」と道行く先を待ち受ける課題のことを意識している、いや、すっきり忘れて早く眠りたい、明日も昼に用事があるし(そのあと晩御飯の食材も買いに行かないといけない)、来週にはテストがあるから図書館かどこかで勉強しないと...、ああ、もう眠ろう、こんな文章もそろそろ終わりにして。

Cemetry Gates (2017 Master)

Cemetry Gates (2017 Master)

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