NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

   頭の中でハリネズミが暴れている。あるいは、バラの棘がちくちくと絡みついている。とにかく頭が痛い。部屋の明かりが目に刺さる。些細な音が耳を突く。誰かに「湯船に浸かるといい」と言われたけど、効果が見られたことはたぶん一度もない。結局一番効くのはさっさと眠ることなのだ。何も見ず、何も聴かず、そして何も考えない。こうすればまっすぐな朝が出迎えてくれる。

   布団の中に天使をつれて、きつくないぐらいに抱擁したなら、すやすやと夢まで行けるだろうか。翳った部屋、カーテンのすき間から真白な月明かりが差し込んできて、僕を濡らすように。今日も夜中の三時に眠って朝の六時に目が覚めた。そして九時から正午まで二度寝した。一日が能天気に過ぎていく。ときどきふとしたことで道に迷う。卑下の言葉をつぶやく人たちが光の方へ歩いているのが見える。それが春に萌える緑のさざ波なのか、摩天楼が放つ幻なのかは分からないけど。

   部屋に明かりが灯る。夕餉の支度と食器が触れ合う音。お風呂が満ちていく。食器が片付けられ、洗われる音。お風呂に入るよう僕を急かす声。肩までゆっくり浸かる。頭に棲むハリネズミもおとなしい。ぼんやりと、いろんなことを考える。仕方がないと言われているようなことも考える。少しのぼせた身体、甘いものを食べ、ラジオに耳をすます。夜が更ける。あくびをし、そろそろと布団にもぐる。人が目を閉じて眠るのは、目覚めたときに再び光に恋するためだ。人々の営みにある光。人々のふれあいに宿る光。

   そういえば、昨日新しい服を買った。ごくごくありきたりな紺色のシャツだ。なかなか厚手の生地だから、もう少し涼しくなるまで待ってもらうしかない。僕は窓を開け、風に手を伸ばす。その風が、紅葉を揺らしてくれることを期待する。うん、目が眩むほどの強さではない。だけどこれもきっと、慎ましく僕の胸を弾ませる光の一つだ。