NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

 もう、曇り空さえうっとうしい。そのうち鼠色の雲が空を覆って大雨を降らすのが分かるからだ。おかげで洗濯物はなかなか乾かないし、靴の中は水槽のようになってしまう。もう何日晴れ間を見ていないだろう。自然と気分は落ち込んで、首元を締め付ける湿気に気持ちが苛立つ。雨のいいところなんて、夏の制服が雨に濡れ、肌着が透けて見えるぐらいじゃないかな。

 頭が痛くてろくに勉強もできず、不毛な時間を過ごして夜が来る。寝付けないまま、ふとした瞬間に思考が真っ新になる。クリアになった視線の先に、いくつもの課題が見えてため息が漏れる。さあ、わからない。これが本当の世界なのか、不安が増殖した架空の世界なのか。そうして、夜の闇が濃くなって寝汗がシャツに染みてなんにもできてない焦燥感がまた夜の色を深くしていく、いや、違うか、ただ単に昼に起きてのほほんとしてたからか、とにかくそんな風に心がぐっと沈み込むときにはある種の願望がちらりと顔を出す。

 例えて言えば、物語を強引に終わらせたい願望。きっと読者は唐突に物語が切れて戸惑うことだろう、でも読者のことなんて正直どうでもいいんだ、という気持ち。きっとこの夜にも、自分の物語に区切りをつける人はいるんだろう。ビルの屋上で、電車のホームで、小さな浴槽で。彼らの弱さや勇気に、ちょっと同情する自分がいる。それは多分、僕にはできないことだからだ。

 僕がまだ物語を終わらせることができないのは、心のどこかで先の展開に期待しているからかも知れない。自分の中の楽観主義。その人がペンを持ち続けている。どこかで未完に終わった物語の余白に、さらさらと書きつける。決してこの物語は自分のコントロール下にはないし、話があっちに行ったりこっちに行ったり非常に気が散るものになっている。読む人によっては「駄作」と評されるだろう。だからいつも、この話を気に入ってくれる人を探しているのだ。この話をもっと豊かにしてくれる人を。

 天気予報をチェックする。傘のマークがずっとつづいている。いつになれば終わるのか分からない雨の日々。だけど、うん、どこかでは虹がかかり、誰かの可愛い肌着があらわになってくれる。一つの傘の下に、二つの影が隠れている。乾いた土に温かな雨が降り注ぐ。晴れ間はそのうち来るはずだ。

ハルジオン

ハルジオン

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