NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

波光

 冷房の風があんまり冷たいから(でも起き上って止めようという気にはなれない)、僕の肌は生きているのか死んでいるのか分からなくなる。まだ眠りにつくには頭がふつうじゃない。そこで僕は疲れようといろんな策を講じるけれど、ただ気休めの悦びと大きな虚無感を連れて来るだけだ。冷たい風の中で、皮膚が汗ばむ。星がいくつか消えて、月の光なのか朝日なのか、部屋がだんだん薄明かりに包まれる。だけど安心だ。やっと夢の中に落ちて、いろんな苦しみがほどけていく。

・曇り空の下、海へ出かけたい。君の手を取って、スポンジのような砂地を駆けていくのだ。ときどき乱暴な風が吹く。白い波が這ってきて、僕らの足を舐めていく。でも二人はそういう不愉快さも笑いとばしてしまう。白いシャツが濡れてビニールみたいになっても、全然気にせずに、何の合図もなく抱擁を交わす。

 目が覚めた。まだまだ眠れそうな気がするけど、僕は勇気を振りしぼって朝ご飯を食べ、シャワーを浴びる。カバンを担いで雨の中を歩いていく。うざったい湿気が首筋に絡みついてくる。テストや講義や課題なんか面倒くさいけれど、他のことを考えなくていいから楽だったりする。チャイムが鳴って、静かに教室を出る。雨がやんでいて、ぬるいような涼しいようなあやふやな風の中、濡れたコンクリートの道を踏んで家まで帰った。そして今、深夜だ。朝の光で隠されていたいろんなことが夜の静けさに暴かれて、混乱している。さあ、薄い布団に包まって目をつむるのだ...。

・君は絵を描いている。音楽がガンガン鳴っていて、僕はスマホを触ったり本を捲ったりしている。優しさと温もりのある君の絵に「いいね」して、僕は洗濯したシャツを干しにベランダに出る。ふと顔を上げると月の光がほのかに町に降っているのが見える。僕らがだべっている間にいくつかの星が砕け、滅んだ。シャツに鼻を寄せて洗剤の匂いを確かめる。部屋に戻ると君は出かけていて、ソファに君の体温と、あの素晴らしい絵だけが残っている。僕は涙を食べる。そうしてまた君を忘れていく。

五千光年の夢

五千光年の夢

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