NIGHT SCRAPS

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猫のさみしさ

 野良猫はさみしいのだろうか。ふと気になってしまう。猫も人間と同じように、誰とでも仲良くなれるやつとそうじゃないやつがいると思う。''そうじゃないやつ''、警戒心がやたら強くて、「近寄らないでください」というオーラを鎧にしているやつ。きっと彼らは、飲み会にも誘われず、ラインを交換しようなんて言われない。そんな彼や彼女はどこでさみしさを乗り越えているのだろう。

 さまざまな場所で出会った野良猫をいっぱい撫でて可愛がる、という動画をよく目にする。彼らはそろそろとヒトに近づいて、もふられる体勢に入る。あまりに無防備で心配になるのだけど、撫でられている彼らは気持ちよさげだ。でも野良猫の宿命というべきか、さよならのときが来る。「別になんともありませんからね」という彼の表情のうらには、どんな感情が渦巻いているのだろう。答えが出ないからこそ、いろいろと考え込んでしまう。ほんの少し怒っているのか、それとも何にも思っていないのか。彼らにしてみれば、人間なんて(ときどき食事を恵む)マッサージ屋さんみたいなものだ。

 もしも彼らが淋しくて僕らのもとに近づいてくるのなら、そして触れられることでそれが満たされるのなら、言葉はずいぶん薄っぺらいものだ。掌の温度や毛並をそっと撫でる感触でなんとかなってしまう。安心させる言葉も、肯定してくれる人も必要ない。そうして猫たちは風の向こうで、午後の陽だまりに守られる。ときどき本能のために誰かを傷つけては、何食わぬ顔でそぞろ歩く。でも僕は考えてしまう。ひとりぼっちの猫は、家族で行動する猫たちを見るとさみしい気持ちになるんじゃないかと。他者を見て自分を知る。自分と似た存在がいれば、そこに比べ合いが生まれる。生徒たちがテストの点数を見せ合いっこするように。

 どうして僕がここまで猫のことを考えるのか。それはなるべく文字数を埋めるためだけど、なにより猫が好きだからだ。人間と猫が戦争したら、僕は猫の側に付くだろう。猫と犬が戦争したら...、それはまた考えようか。今はただ、軒下で雨露をしのぐあの猫のことを。ただそれだけのことを。

愛のままを

愛のままを

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