詩について
網戸の隙間から、ご機嫌な風が吹いてくる。それはカーテンをそっと揺らして、埃を踊らせる。初夏と言われても疑わないぐらいの気温で、ベランダの先に見える緑がまぶしい。ときどき隣の部屋から笑い声が聞こえてくる。何の憂いも感じさせない陽気な笑い声だ。
今読んでるレイモンド・カーヴァーの本から、大好きな「ロードス島」という詩を紹介したい。「僕」は島の広場に座ってビールを飲んでいる。
どこかその辺にアポロンの巨像があって
あらたなる芸術家なり
あらたなる地震なりを待っている。
でも僕はべつに野心はない。
僕はここにじっとしていたい。正直な話。
でも僕は丘の上のホスピタル騎士団の城の
まわりで飼われている鹿たちと
遊んでいたいなあと思う
でも(!)結局「僕」は眠りの中へ落ちてしまうので、内容としてはただビール飲んで寝る男の話になる。ただ僕はなんとなく惹きこまれる。「別に野心はないけどさ、いや本当はあの美しい鹿とも遊んでみたいんだよ、本当はね(ぐびぐび)。...あーあ、眠たくなってきた」みたいなあやふやな感じ。
変わって、岡村靖幸さんの「SUPER GIRL」の歌詞もすごく好きだ。「俺ほどの男はそうはないはずさ」「俺ならば本当に損はないはずさ」なんて詩が続く中で、実はこの「俺」は21歳で仕送りを貰っていて、そのお金も「君」に貢ぐために使っていることが分かる。なんだろう、このすごさ。「仕送り貰ってる」みたいな歌詞は普通ラブソングに出てこないし、それでも「俺」のかっこよさが保たれている不思議。岡村靖幸という人間にしか歌えない不思議。
あと宇多田ヒカルさんの「For You」も昔からお気に入りで、久しぶりに読んだら「孤独だなあ」とやっぱり思った。それは「君」が明らかに不在しているからだ(知らんけど)。「散らかった部屋」とか「くれた歌」にはほのかに宿っているし、主人公は「君の顔」のために起きているけど、たぶん朝起きたって部屋に君はいないし、ただ部屋に散らかった形跡が残っているだけだ。そして、そこには孤独がこびりついている。
これを書き出したのはうららかな正午すぎだったのに、今はもう日が変わろうとしている。何をしていたのか?いろいろです。岡村靖幸聴いたり、喫茶店でジャズに耳をすませたり、いろいろ。明日には、実家で退屈してると思うなあ。退屈だからこそできることもあるんだけど...。
- 作者: レイモンドカーヴァー,Raymond Carver,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (24件) を見る