ふくろう通信 その四
去年は、ずいぶん多くの機会で「平成最後の」という前置きを聞いた。僕は、自分が平成生まれであることを特に意識したことはなかったけれど、そのうち「おれら平成生まれはなあ...」なんて能書きを垂れるのだろうか。「平成」という顔も知らない誰かにぞっとしながら、今日も折坂悠太さんの『平成』というアルバムを聴いていた。個人的には、平成というより昭和っぽい雰囲気だな...と思ってしまうのだけど、それはそうとして心地いい。一曲目の「坂道」がとてもお気に入りだ。
ずいぶん身近な匂いがする。太陽を燦燦と浴びた布団の匂いや、髪の毛のにおい、雨の日に焚いたお風呂の湯気のそれ。生活の中でふと鼻の奥へ入り込んでくる景色のいくつかが、音楽を聴いているとなんとなく感ぜられる。
少し前から、ヒップホップを意識して聞いている。昔は、途中でラップが入った途端ぽかんとしていたけど、今はあんまり気にならなくなった。90年代のヒップホップの独特の泥臭さとか土臭さが好きで、まだ今のエミネムとかドレイクとかはあんまり追えていない。まだむつかしいわ、ヒップホップ。同じように、ジャズもいくつか聞いていて、いいなあと思うものと「ようわからん!」と髪をかくようなものがあるけど、チェット・ベイカ―とかセロニアス・モンクをとりあえず好いている。
だからグール―の『Jazzmatazz』を聴いたときは、いいとこどりだなあと思った。ちょうどいい感じ...フュージョンの良さだなあ。「ドナルド・バードやロニー・スミスといったジャズのレジェンドたちとセッションしたプロジェクト...」と、『POPEYE』で紹介されていたけど、僕は彼等のことを知らない。だけど、ジャズとヒップホップをここまでいい感じに合わせるのはすごいなあ。''Loungin’''や''Trust Me''を聴いてほしい。
今回のふくろう通信はここまで。最近、気持ちいい音の作品が増えてる気がする。新しい音楽の旗手が現れて、それに刺激を受けてどんどんと音楽がよりよくなっている感じがして、僕は嬉しいしぞくぞくする。これからどうなるんだろうね。