アカネ

 頭がずきずきと痛む中、僕は食材でいっぱいのビニール袋を持ってスーパーを出た。急に気温がどっと低くなったから身体の調子が狂ったのか、それとも授業でむつかしいことばかりやっているからそれについて行けずに脳がパンクしたのか。どちらにせよ頭に棘が刺さっている。

 夕暮れというのは本当に面白いもので、ふと空を見ると夕焼けに染まった雲が鮭の切り身みたいにぼてっと浮かんでいる。またある時には、桃の薄皮みたいにほのかに香っている。えぐれた傷あとに見えるときもある。そういうのをいちいち考えながら、やきとり屋の煙や鬼ごっこする子どもたちを通り過ぎていった。スピッツを聴いていると、長い赤信号もあんまり気にならない。

 最近、「人にしたことは自分に帰ってくる」ということをよく考えている。自分が捨てたゴミは、いつか自分が拾わなきゃいけなくなる。誰かを追い出すことは、自分が追い出され得ることと同じこと。だから何だと言われたら大したことはないけど、最近よく見る(いや、歴史的によく見られる)排他的な流れは、いつか大きなものとして帰ってくるんだろうなと思う。静かに。

 帰って、生姜たっぷりの鍋を食べ、温かいお風呂に浸かり、ぐっすり眠ったら頭のずきずきも大したものじゃなくなっていた。お菓子を食べながらパソコンを起動して、夜のドラマをぼーっと眺めた。やらないといけないことはまだあるけど、まああんまり考えないようにしよう。日曜日にゼミの関係で原稿を読まないといけないけど、あんまり考えないようにしよう...。

 そういえば、父親が仕事を変えたらしい。地味な肉体労働らしい。もういい歳なのに、いまだに身体に無理言わせて働いている。父のことを考えると、自動的に「自分は...」と思考が流れる。自分も60を過ぎても汗かいて働いているんだろうか。家族なんて責任を背負いこめるのだろうか。分からないぶん、不安ばかりが増殖する。不安だからいろんな商売がまかり通ってるんだろうし(占いとか風水とか宗教とか)、それは当然なんだろうけど。

 モラトリアムは、「自分が誰にも必要とされない」と痛感する期間だと思う。自分の意見が甘っちょろいものだと気づき、自分の手札の少なさに汗が噴き出すものだし。ふと見上げた夕空がきれいすぎて、でも帰ってきたら部屋の汚さに泣きたくなるし。そう簡単に、かんぺきな自分にはなれはしない。簡単に手に入れたものは、簡単にこぼれていくものだと思うから。''Easy come, easy go''というやつだ。道は長い。はあ、甘えたい!

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