ココニイルコト

 夏祭りに一緒に行かないかと、同じゼミの女の子にラインで誘ってみた。数分後に返事が来た。私も行ってみたいけど、サークルのキャンプと重なって行けんかも。ああ、そうだよね。幾つかの言葉のキャッチボールを経て、会話は止まった。僕はスマートフォンを置いて昼寝を始めた。これは、昨日のお話。

 正午を少し過ぎて目が覚めた。起きてはまた寝て、を何回繰り返しただろう。喉が渇いている。テーブルの上に置いてあったペットボトルを口元に近づけて、ごくごくとお茶を飲む。身体の中の管をどんどんと下っていくのが分かる。ふと鏡を見れば寝ぐせがひどい。重くて固まった身体を動かして、バスタオルを手に取り、バスルームへ向かう。きれいさっぱりになって服も着替えて、軽い食事を済ませて外へ出る。

 うっとりするくらいの青空が見えた。すごく遠くに、白い雲が堆積している。暑いだろうとタオルを持ってきたけれど、風はそんなに熱くない。リュックサックの中は、シェイクスピア関連の本と『リア王』の原文。今日は大学でゼミレポートの骨組みを考えた。『リア王』には三人の娘が出てくるのだけど、結局みんな死んでしまう。それは何故なのだろうということと、当時のジェンダーについて考えてみた。「こうであるべき」とされた女性像。父権制と「じゃじゃ馬ならし」。むつかしいけれど、考えると楽しかった。しかしながら、3000字。書いたことのない文字数なので不安ではあるけれど、太い骨組みはできたから大丈夫だと思いたい。それにしても、昔の「女性はこうあるべきだ」(逆もまたしかりではあるが)という考えに触れる度、今もそれはやや透明ながらも残っているのではないかと疑ってしまう。

 午後四時になり、そろそろ出るかと大学を後にした。途端に生温い空気に当たる。汗ばんだ肌を拭おうとタオルに顔をうずめたとき、ふといい匂いだと気がついた。芳香剤の匂いだ。普段はあまり香らないのに、今日は特別だなあ。そうして家に帰って、しばらく落ち着いているとアイスが食べたくなった。また外へ出て、ゆっくりと歩く。もう夕方の時刻だったけれど、空はきちんと青く、近所のお好み焼き屋さんには、おじさんが出来上がるのを座って待っている。モナカのアイスを買った。もう周りは夏休みのムードだけど、大学生にはまだ少し先のことだ。

 今、楽な格好で、ベッドに寝そべりこれを書いている。友達から電話がかかってくるのはいつだろうと待っている。そうだ、今年の夏は何をしようか。楽しみを考えながらまた一つ夜を越えていく。  

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