NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

再上映

   親がもう寝静まって、町全体も眠りについた。本当なら、僕もそういう状態でいなければならないのだろうけど、まだ目が冴えている。部屋の壁に備え付けられている、火災報知器が黄緑色の光を放っている。乱視の目でそれをぼうっと眺めていた。右へ左へと身体を動かして、眠れる体勢を探ろうとしてみるものの、やっぱり眠れない。布団を被って苦行のように熱の中で目をつむるけれど、ただ汗がシャツに染むばかりだ。

   こういう夜に限って、今までの人生(大した思い出のない微かな人生だけど)をふと振り返ってしまう。頭の中で昔の記憶が上映される。何回目の再放送だろう。僕はその記憶の視聴者でありながら、同時に監督でもあるので、「ここのカットはこういう風にしよう」と勝手に変更を加えてみたくなる。本来の記憶とは違う、もしもの並行世界をしばらく楽しんで、そのあとやって来る虚しさと対峙する。あのとき自分がこう行動していれば今よりちょっとましな人生になっていたかもしれない、でもそれは今のやるせなさを誤魔化したいだけだ、とか。ただ空想したいだけなのに、なんだかそこに責任を感じてしまう。丸い汗がすうっと額を駆け抜ける。母親のいびきが炸裂する。

   このところ大気が不安定で、日の光にうんざりしていると突然雨が降ったりする。簡単に移ろう天候に身体は疲れて果てる。それでも外へ出なければならない日々が待ち構えているので、僕はちょっと暗闇の冷たさにうっとりする。部屋に充満する暗がりの色。朝が来れば物陰に隠れてしまう。だから今だけは、この安全地帯で、それぞれのさみしさを持ち寄って語り合う。意味のない言語を使う。どちらかが眠ってしまうまで、布団の中で、ひそひそとだべり続けるのだ。間が持たないときは、映画でも流してみる。懐かしい人の、懐かしい映画を。

ブルーバード

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  • 蔡 忠浩 & 千葉はな
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