NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

柳のような日々

 お昼休みの教室は、明かりがないと薄暗い。蒸し暑い季節にはそれぐらいが丁度いいのかもしれない。ガラス戸を開けて、にぎやかな音と控えめな風を中へと誘う。窓という額縁の中に、初夏のスケッチが収まっている。優しい色が輝いている。同じゼミの女の子と少しお喋りしていると、先生が来て教室にぱっと明かりが点く。それから長い一時間半がはじまる。

 自転車がでこぼこの道を通るたびに、かごのなかの食材やらお菓子やらが揺れる。授業が終わり、スーパーで「今晩何食べよう」と考えている間に時間はあっという間に過ぎて、夕日がまるく尖っている。草を揺らし、雲を流す風はすっかり心地いい。ランドセルを背負った子供や、部活帰りの少年たちが信号待ちをしている。家に帰って、面倒だなあと思いながら料理を作る。今晩はナポリタンだ。包丁で切り、鍋で茹で、フライパンで炒める。食べ終わったら食器や調理器具をスポンジで洗う。うん、疲れるけれどなぜかやめられない作業だ。一人なんだから適当でも誰にも文句は言われないのに。

 そういえば、去年の今頃はあの人と仲良くなりたいと思っていたんだった。もっと暑くなる前、普通に言葉を交わしながら隠していた不潔な感情。夏祭りとか、喫茶店とか。あの人の涼し気な服。二人で過ごす場面を想像しては、たしかなナイフで切り裂いた。今は同じゼミの人として、清らかに関わっている。それでいい。それがいいと、心の底から思う。もう夢の中に現れることだってないし、妄想で演出をする必要だってない。たとえ、きれいな蝶が誰かの指に止まっても強がっていられるのだ。

 僕の生活は柳に似ている。決して上を目指すことなく、ひどく恨めしく見えるときだってある。だけどその緑には血が通い、今日も風に吹かれている。水を、日の光を求め、か細い枝を繋ぎとめる。今晩何を食べようか考え、カーヴァーの詩に救われる日々。きっとそんな感じだ。それはそうと、しだれ柳、僕は好き。なんだかちょっと、さびしさを覚えるからか。艶っぽい長髪みたいで、きれいだなあと思う。解散前のビートルズが柳の葉に囲まれている写真も好きだ。いつか僕も、あんな風に撮られてみたいのだけど。誰かすてきな女の人と。

One Man Parade

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