NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

ぬれた靴

 昨日の雨の行方を考えながら、僕は湿った靴をベランダの日向に移した。ほんの少し膨らんだ川や海、恵まれた森林、コンクリートのうえで行き場をなくした水溜まり。そういう景色を妄想した。今日はずいぶんからっとした気温で、普通にしていたって喉が渇く。自動販売機で水を買って飲んだ(このところ水分だけでお腹が満ちてしまう)。そして、汗臭い人や喪服を着た人を通り過ぎて教室へ向かった。

 書くばっかりの授業は自然と暇になる。窓際の席から緑や青を眺めて、先生が書き終わるとノートに文字を書き込んだ。沈黙を切り裂くみたいに後ろの方からカメラのシャッター音が聞こえてくる。いくつも。書くだけでなんとなく疲れて、先生の低い声があんまり聞き取れない。プリントにしてくれればいいのに、とみんな思っているけど、それを声にする人は未来永劫現れないだろう。窓の隙間から新鮮な空気が迷い込んで、代わりに濁った空気が退席した。ホワイトボードは先生の文字でいっぱいだった。チャイムが鳴る何分も前に授業が終わって、大勢の学生が教室を出て行った(そして次の授業を受ける学生が入ってきた)。

 図書館でフーリガンに関する本を借りた。ただ本をカバンに詰め込むだけなのに、新しい知識が入り込んでくる予感がしてくる。90年代、イングランドで問題となったフーリガンについてのドキュメント。フットボールというスポーツに憑く、愛国心とかナショナリズムとかの問題。今はそれについて考えるのが楽しい。ここ最近、僕の脳の上に豊かな雨が降り注いでいる感じだ。図書館でふと目にした資料から、いろんなことを考える。土壌が大したことないだけに、そこから芽吹くものも少ないんだけど。

 ベッドの上に雑然と本を置いて、こうして文章を考える。「友達から電話がかかってきたりしないかな」とかワガママな気持ちもありながら。そろそろ梅雨の季節かな。シャツが乾かなくてうんざりしたり、水溜まりを避けようとしたらクラクションを鳴らされたり、憂いの多い季節だ。町に溢れる街路樹も、水腹になってしまう。だから今のうちに、若々しく輝く緑の一つ一つを愛でなくちゃ。それにしても、時が過ぎることのなんと早いこと。はあ。

ぬれた靴

ぬれた靴

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