NIGHT SCRAPS

夜をつらつら書き連ねるブログ

さよなら夏の日

 雨が降りそうだった。でも、降らないようにも思えた。かすかな希望を信じて、僕は外に出た。秋の気配はあるけどまだ湿気が鬱陶しく、胴の部分にしがみついてくるような感覚があった。一応、家から傘を持ってきた。

 図書館は歩いて10分ほどの距離だけど、身体が温まった。髪は汗で湿気て、頬や耳が赤くなっているとはっきりと分かった。周りの人は涼しい顔をしているので、恥ずかしくなって、余計に暑くなった。図書館で読んだのは村上春樹さんの『村上さんのところ』だ。読者からのメールに春樹さんが答えているのが面白く、またぐっときた。

 さぁ、帰ろう。図書館を出ようとしたとき、傘がないのに気がついた。入り口で置いて来たはずだ。…誰かに盗られたんだとわかると、急に気分が落ち込んだ。なんだよ…。

 そのまま帰ってもよかったけど、まだそういう気分になれなかった。イヤホンからはPrinceの"I Wanna Be Your Lover"が流れていた。自然と足が弾む。踊りたくなる。 

 帰省すると必ず一回は通る場所がある。母校である小学校だ。長い長い階段のある神社を横切り、少し歩くとプールが見えてくる。もう使われていない、エメラルドのような色をした水面。潔癖っぽい僕は、ぬるぬるとした地面が気持ち悪くて仕方なかった。懐かしい。あ、運動場だ。当時は小さな砂漠のように思っていたけど、今見るとかなり狭く感じる。ラインが引かれ、ハードルが置かれていたけど、それもかなり小さく、低い。あんなに真剣に飛び越えていたのに。

 あれこれと眺めているだけで、物語がずるずると芋づるのように姿を表す。小学六年生の頃、朝の7時には来て竹箒で学校前の道を掃いていたなあ。あと、学校の本当すぐ近くに住んでいる同級生が羨ましかった。学校から帰る道。小学一年生のとき一緒に帰っていた女の子がいたんだけど、どちらともなく「好き」だって言い合ったなあとか。小学四年ぐらいのとき、その女の子が僕に「○○さんと遊んであげて、やさしいんだね」と言ってきたこと(この言葉の真意は今もわからない)。

 景色から、音や匂いが飛び出してくる。そして、あの時はあの建物があったんだけどな…と寂しい思いも感じる。近所のローソンは明光義塾に変わった。塾がたくさんできてるけど、講師の数は足りてるのかな。僕には関係ないけど、みんな色々大変そうだ。じんじんとした疲れのせいで少し眠たいけれど、なんだか勿体ないような気もしている。夏休みが、もうすぐ終わってしまう。いつまでも、昼過ぎまで眠っていたいんだけどなあ。残念だ。さよなら夏の日。