NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

怪電波

 雨雲は町から青さを奪うだけじゃなくて、心の中からも元気がすうっと薄れてしまう。昨夜はなかなか眠れず、ずっと動画を見たりしていた。一度軋んだリズムはなかなか戻すのはむつかしくて、そうして心身の体調を崩したりしてしまった。でもコップに溜まったうつうつとしたものを文字に還してみたら何となく元気になって、今日も町に出た。

 いろいろな音楽を探していて、椎名林檎トータス松本の「目抜き通り」を聞いたら少しだけ勇気が湧いてきて、今日は明るい椎名林檎の曲を聴こうと思った。東京事変の「勝ち戦」に、ソロの「労働者」(切情とした労働者の気持ちをジャズロックのメロディでポップに仕上げた名曲だと思う)、そして「人生は夢だらけ」が流れた途端、目覚める感覚があった。自転車で本屋さんへ向かう途中だった。「この人生は夢だらけ」という歌詞とともに、楽器が一斉に奏ではじめる。脳から贅沢な水が絞り出されるのを感じたし、これで雑炊をしたならさぞ美味しいだろうと思った。自分の欲望をひたすら追い求めることを肯定するメッセージ。日常にぱっと花が開くような感覚。

 本屋さんに行って「コーネリアスのすべて』があるかなあと探したけど、なかったので、少しぶらぶらして帰ることにした。The Smithsの『Hatful of Hollow』がプリントされたTシャツを着て、自転車を漕ぐ。狭い道で緑が多く、近くにはグラウンドが見える。ユニフォームを着た子供たちが、シュートの練習をしていた。曇りなのに、音楽を聴いていると心が晴れ晴れとしてきて、汗をかいても気にならなかった。

 こういうとき、自分は全然関係ないようなところからすごく影響されているんだと感じる。自分の頭がアンテナを張っていて、どこかから勝手に電波をキャッチしている。良くないものも、すっごくワクワクするものもある。それはきっと、どこからともなく現れて、アンテナはそれに反応せざるを得ない。誰の声も割と簡単に届くようになった時代で、どれくらいの怪電波を拾うことになるんだろう。そして生きている間に僕はいくつの怪電波を飛ばすんだろう、あなたに。

 僕は昨夜、動画の中でずいぶん共感することを見つけた。コメントでは「怖い」とか言われていたけど、そういう「人と少し変わっているかもしれないけど、自分はこういう人です」というメッセージは、ずいぶん助かる。あと、本当にくだらないことも、どよぉんと沈んだ気配を切り裂いて笑いをもたらしてくれる。今日、ツタヤにいたら人とぶつかりそうになって、右に避けようとしたら相手もこちらに来て、じゃあ左に...と同じようなことを何回か繰り返し、恥ずかしくなって店を出ました。


椎名林檎 – 人生は夢だらけ