NIGHT SCRAPS

life, solitude, words

勿忘草(わすれなぐさ)

 昔から暗記系のテストが苦手だ。なぜか。すぐに忘れてしまうからだ。漢字も歴史の年号も、さあテストだという段になってぽかんと抜けてゆく。それに、人の名前もすぐに覚えられない。日常会話の中で友達で話していた事柄もあんまり記憶していない。だからときどき「人に興味ない」と思われがちだ。いやあ、そんなことないと思うんだけど...、何か話したことは覚えているけど、重要な中身がぱっとしなくてだんだんまるっきり忘れてしまう。

 この間も文学の歴史に関する小テストがあって、「本居宣長」がまったく書けなかった。あれ、顔は出るのに、名前が...って感じ。その日は結構つらくて、3つの授業でテストが行われたから、その授業まで復習する余裕がなかったのもあるけれど、大学生にもなって「本居宣長」が出なかったのは結構ショックだった。高校生までのテスト週間を思い出すとぞっとした。あと、センター試験が終わるといろいろあっという間に抜けてしまうものだなあ。「鎌倉時代」も「室町時代」も忘れていた。だめだねえ。別に日常に支障をきたすわけじゃないけど、ちょっと前までごくごく当たり前だったことをすっかり忘れてしまうというのは、なんだか情けない。

 その、片隅に押しやられて‘‘かす’’みたいになった記憶を、赤の他人に引っ張り出されることがある。「っ、あっ、そんなことあったね!」と手を叩いて思い出し、そのときの景色がぱあっと広がるような。そして、自分があのとき体験していたことに加えて、当時自分が考えていたことまで思い返すこともある。どうして忘れていたんだろ...とぽかんとしながら、押し入れの奥から出てきたおもちゃを久しぶりに手にするみたいに、しばらく感慨にふける。

 このブログを書いているのも、「このときの僕はこんなことを考えてたんだな...」という昔の自分との出会いを楽しんでいる部分がある。大学という場所はほんとに刺激的な場所で、多種多様な人が同じ場所で授業を受ける。しかもその授業自体が、今までの自分の理解を越えた鮮やかな学びを与えてくれる。そうしたところで揉みくちゃにされていると、自然といろんな考えを抱く。それをつらつらとここで書き記しておくと、ある程度して読み返したとき結構面白いのだ。何か月か前の自分だというのに、なんだか他人の文を読んだかのような気分になる。同じ自分だけど、「なるほど」とうなることもあるし、若さや青さが少しばかり恥ずかしくなることだってある。

 一人暮らしを始めるまえから、ノートやメモ帳にあれこれと書いてきた。でもそのときは、鬱屈した感情が主にそうさせていた。今見るとかなり恥ずかしいけど、そのときの自分も忘れちゃならんなあ、と紙を捲りながら思う。