NIGHT SCRAPS

夜をつらつら書き連ねるブログ

春にして君を想う

 二月から一か月間帰省していたが、また一人暮らしに戻った。ぐうたらしすぎて、三年寝太郎もこんな感じだったんだろうと、ぼんやり思う。これではまずいから、今日は町をぶらぶら歩いていい感じに疲れさせた。

 ここ最近、野生の匂いを嗅いでいない。どういうことかというと、僕が住んでいるマンションには野良猫が居着いてて、その猫のなんともいえない獣臭さがときどきしていたのだ。僕は最初、やっぱり「うっ」と鼻を押さえ、早足で自分の部屋まで過ぎていった。でもそれにも慣れてしまうと、その匂いがしたらどこに猫がいるか探して、「あっいた」と、じっと目を合わせ、小さくにゃあと言うと向こうもときどき「にゅあ」と返してくれて、にこにこしながら僕は去っていくのだった。しばらくいそうだと分かると、部屋まで走り、冷蔵庫からチーズを取り出してそっと猫にあげる。猫はまったく人になついていないので、びくびくしながらチーズに近づき、さっと取って陰のほうでパクパク食べる。

 最近、その獣臭さがまったくしない。僕の鼻がやられてしまったのかもしれないけど、実際その猫を見かけていないから、なんだかそれはそれで淋しかったりする。洗濯をするためにベランダに出ても、日向ぼっこをしてる猫はいないし、喉乾いたなあと自販機まで歩いていくときも、さっと逃げるはずの猫はいない。毎週金曜には(なぜか)猫が喧嘩してる鳴き声が聞こえたのに、やっぱり静かだ。

 猫特有の気ままさに、僕はまんまと悩まされているのかもしれない。でも、雨が降った日や風の強い日なんか、ちゃんとどこかの家でお世話になれているのだろうかと心配してしまう。別にいたってすり寄ったりしてこないし、かわいい振りさえしてこないのに、いざ見かけなくなったら淋しいなんて。

 今日町を歩いていたら、自転車に乗った女の子と目が合って、それが同じ科の人だと気づいた時には向こうが笑って手を振ってくれて、僕も同じように振り返した。しばらく会ってなかったし、そんなに喋ったこともなかったのに、嬉しく思った。いつも会っているわけじゃないから、余計に嬉しかったのかな。そんな風に、猫ともまた会えるのだろうか。会えたら絶対目を合わせよう。にゃあって言ってみよう。向こうも鳴いてくれたら、じゃあねと別れよう。そのぶん、嬉しさは二倍でね。