VILLAGE GREEN

男子大学生が‘‘ほぼ’’毎日書いているブログ

ふくろう通信 その二

 

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以前の記事で紹介した、松任谷由実さんのことについて、もう一度書きたいなと思った。ここ数日、ユーミンの音楽ばかり聴いている。『MISSLIM』や『COBALT HOUR』なんかを繰り返しリピートして。でも改めてアルバムやシングルの数を考えると、45年という年月の重さを感じる。1995年の『KATHMANDU』ぐらいまではほぼ毎年の勢いでアルバムをリリースしていたような気がする。今でも2,3年に一枚のペースで作り続けているから、恐ろしい。創作意欲が泉のように湧き続けているのか、枯れぬように常に新しいものを探し続けているのか。どちらにせよすごい。

 1.瞳を閉じて

瞳を閉じて

瞳を閉じて

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  演奏が細野晴臣さんや林立夫さん、鈴木茂さんといった大物で、コーラスにはシュガーベイブ、当時の日本の最先端の音が鳴っているのに、歌詞は日本の情緒だ。風に乗ってきた潮の香りや、耳を撫でる波の音、船に揺られている感覚とか、ユーミンのからりとした歌声から、そうした情景が浮かび上がってくる。東京の生まれだと聞いたけれど、そういう牧歌的な自然も描けてしまうのはすごいなあと思う。

 2.VOYAGER~日付のない墓標

VOYAGER ~ 日付のない墓標

VOYAGER ~ 日付のない墓標

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 80年代になってからなのか、ユーミンのラブソングには‘愛’と‘戦い’のイメージが強く結びつくようになった気がする。時代の変容が原因だと思う。並木道や喫茶店で恋をしていた彼らが、無機質なビル街や満員電車、あるいはディスコへと場所を移したんだろう。80年のアルバム『SURF&SNOW』はかなりポップな歌が多いけれど、そこからはだんだんと切なくなってくる。きっとこの「VOYAGER」も敗れた人の歌で、あてどなくさまよう人たちの姿を映し出す。たぶん。働けば働くだけ潤った時代に、ユーミンの歌は麻薬のように、擦れた心や疲労した身体にやさしく聞こえたんじゃないかなあ。

 3.ホタルと流れ星

ホタルと流れ星

ホタルと流れ星

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 配信のおかげでこの曲を知ったのだけど、かなり好きだ。アナログシンセかなあ、かなり温かみのある音で、今聞いてもかなり新しい印象を覚える。蛍と流れ星、どちらもはかないもので、恋の終わりを感じる。「ホタルと流れ星」が収録されたアルバムが発売されたのは1990年、僕はまだ生まれていませんが、約30年前の音とは思えない...。このアルバムは、『REINCARNATION』などで歌われたスピリチュアルな世界と、既述したようなリアリティが折り重なっているものだと、酒井順子さんの本に書いてました。すごいなあ。

 4.あなたに会う旅

あなたに会う旅

あなたに会う旅

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 16年のアルバム『宇宙図書館』。もう二年も経ってたんだ...。ずしんと重い、大きな力が宿っているような気がする。こればかりはもう少し歳を取ってみないと分からない。歳を取っても分からないかもしれないけど、親や友人や慕っていた人たちが旅立って、自分が残されたときにふわりと理解できるようになるだろう。きらきらした時代や戦いの時代を越えた先には、こんな風景が広がっているのか...。これを聴きながら、僕はデヴィッド・ボウイを思い出した。若い頃にカリスマとして数々の歌を生み出して、時には時代に追いつかれたりしながら、『The Next Day』や『Blackstar』でまた未知のものを作った。とても常人にはたどり着けない旅。ユーミンは、どこまで見せてくれるんだろう。

 

 ...『昨晩お会いしましょう』や『時のないホテル』を耳にすると、アルバムを買って歌詞カードを見ながら聴いていた頃を懐かしく思う。日本を歌いつづけるユーミンの歌は、いろんな時代へと飛べるタイムマシンなのだ。

グループ

グループ

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積み木

 いろいろな言論が繰り返されていて、それを飽きるぐらい聞いているうちに「本当に話し合わなければならないことなんだろうか」という問いに行きついた。あまりにも自明なことを誰かがややこしい言い方でほじくり返している。言葉にしなくても大事だと分かるものを、言葉にしようとしてこんがらがって、本当に大事なのか分からなくなっている。そういう気がしている。でも、そう言う僕も言葉で説明しようとしている。

 LGBTの問題も、きっとそういうことなんじゃないかと思う。LGBTではない人々が「彼らに対する差別や迫害はない」とまじめな顔で言っているのは滑稽だなあと思う。僕自身はLGBTには当てはまらないから、分からない。例えば異性愛者が「実は私は異性愛者なんです」と言ったら「そんな当たり前のこと言ってどうするの?」という反応が返ってくると思う。でも同性愛者だとそういう返事が返ってこない場合がある(のだろう)。先日、ゲイをカミングアウトしたアメリカの少年が自殺したというニュースを聞いた。まだこういう実情がアメリカでもあるんだという事実に、胸が張りさけそうだった。

 守るべきものは、きっと理由など必要なく守るべきなんだと思う。でもややこしい問題は、人それぞれで辛さや負担が違うことで、支援してほしい人もそうでない人もいるということだ。きっと「わたしはバイセクシャルだけどそんな差別なんかつらくなかった。あなたたちは甘えているだけじゃないのか?」という声も起こるだろう。そんなことを言われると、何も言えなくなる。いじめられた子が学校を休みたいと親に言って、「おれも小さい頃はいじめられた。でも頑張って学校に行ったんだ、お前も行け」と返されたら、もうどうしようもない。それと似ている。

 もう一つの問題は、負うべきものと差別の区切りがどこなのか。例えば、女性がさまざまな権利を主張できるようになって、「男性差別だ」という声がときどき起こる。それは、自分の負担が増え、向こうの負担が軽くなるからだ。しかし、差別をなくす上で、今まで甘んじてきた側の負担は自然と重くなる。今まで軽かったバックに、背負うべき荷物が入れられる。どこまで負うべきなのか、甘んじてきた側も、苦労してきた側も、よく分からない。きっとそのことで、ずいぶんややこしい議論が起こるだろうけど、それも必要なことなんだろうと思う。たぶんね。

 日本の膿を、いつ絶えるのか分からない膿を散々見せられると、嫌だなあと疲れる。それでも、生きねば。あ、そういえば松任谷由実さんの作品が24日から配信されるみたいですね。すごく嬉しい。こういう小さい楽しみを積み重ねないとね。

ひこうき雲

ひこうき雲

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エスケープ

 生まれつきの乱視で、しかも近眼である。遠くのものはぼんやりと映るし、目の力を抜くと景色が割れてくる。だから部屋に黒く小さな生き物が現れたときも、最初はゴキブリかと思った。面倒だなあという思いでいっぱいになる。しかし眼鏡をかけてすぐにわかった。やもりだ。...家守。まだ幼い様子で、僕の気配に気づくと部屋の隅へと壁をつたって逃げてしまった。やもりというと、僕が小学生のころ母が可愛がっていたのを思い出す。

 やもりは縁起がいいと聞く。お金が舞い込んでくるらしい。いや、単にうちのマンションに虫が多いだけだが、そういう都合のいい言葉にそそのかされて、僕は今朝JRに乗った。土曜ということもあって、中はぎゅうぎゅうだった。つり革を握っている手の痛みを感じながら、流れる景色を見ていた。駅から歩いて、服を買いに行くのである。まだうららかな日差しで、汗の玉がすうっと肌を滑っていった。買った服は長袖のジャケットだった。すぐに着たかったけれど、この暑くさいなかで、無理をして着て汗を流すのなんてばかばかしい気がした。

 おなかが空いてきて、商店街を歩くことにした。ずうっと気になっていたサンマルクカフェに困惑とぎこちなさを感じつつ初めて入ってみた。サンドイッチがおいしそうだったのでそれを一つ選び、そしてアイスカフェラテのMを頼んだ。入り口近くの席に腰を下ろす。アイスカフェラテを一口飲むと、シロップの甘さとミルクのまろやかさで元気が出た。このアイスカフェラテは、ミルクがおいしい。ざくざくと細かく割られた氷もおいしい。一気に涼しくなった。

 本屋さんや図書館に立ち寄ってぶらぶらしていた。つい吉田秋生さんの漫画をチェックしてしまう(この間買った『ラヴァーズ・キス』はとても面白かった)。疲れてきたので路面電車に乗り、大学近くの停留所までサカナクションの『NIGHT FISHING』を聴きながらじっと座っていた。

 大学に寄って、イチゴ牛乳を買って飲んだ。甘い。ちょっとうんざりするぐらいの甘さだけど、僕はこれが好きだ。ベンチに座って、カバンからジョージ・オーウェルの小説を取り出して読む。やっぱりいろいろと考えてしまうけれど、最近のあれこれについては少し口をつぐんでいよう。気がつくと、木立の葉が枯れて落葉している。ここ最近、彼岸花もよく見かける。緑の中で赤がよく映えている。スマホを触って、サカナクションの『さよならはエモーション/蓮の花』を聴くことにした。最後の「ミュージック(Cornelius Remix)」がすごくいい。ベックの「Mixed Bizness」のリミックスもいいなあと思ったし、小山田圭吾さんはすごいねえと感心しつつ、買ってすぐの服に袖を通した。

ミュージック(Cornelius Remix)

ミュージック(Cornelius Remix)

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Beck - Mixed Bizness (Cornelius Remix)

ふくろう通信 その一

 最近聴いている音楽をどばーっと紹介しようと思う。今日は雨が降っていたので、特にすることもなく音楽を漁ってばかりいた。ここ最近気に入っているのは、ミツメというバンドだ。最初に良いなあと思ったのは、セダンという曲だ。インディーロックっぽい感じと、スピッツからの系譜を感じるメロディ。近所を散歩するときに聴くとなんかいい気分になってくる。

セダン

セダン

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 次に気に入ったのはアズテック・カメラの「Walk Out To Winter」だ。...ミツメからずいぶん時代が遡ってしまった。この曲は1983年に発表されたものだ。まず聞いて思ったのは、フリッパーズ・ギターだ!ということだ。いや、フリッパーズのほうが後なんだけどね。

Walk Out to Winter

Walk Out to Winter

  • アズテック・カメラ
  • ロック
  • ¥250
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Boys Fire the Tricot / ボーイズ、トリコに火を放つ

Boys Fire the Tricot / ボーイズ、トリコに火を放つ

  • FLIPPER'S GUITAR
  • J-Pop
  • ¥150
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 その流れで、Feltというバンドもいいと思った。好きなアルバム『Forever Breathes the Lonely Word』はApple Musicになかったけれど、『Ignite the Seven Cannons』もいいなあと思った。イギリス情緒のある、薄曇りの音楽だ。

The Day the Rain Came Down

The Day the Rain Came Down

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 フリッパーズ・ギターの元ネタから色々学んでいるなあ...。Haircut 100も面白いバンドだと思った。あと、オレンジ・ジュースもかっこいいですね。

Favourite Shirts (Boy Meets Girl) [12

Favourite Shirts (Boy Meets Girl) [12" Version]

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Three Cheers For Our Side

Three Cheers For Our Side

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 このあたりのジャンルがすごく好みです。なにかおすすめがあれば、ブックマークかコメントで教えていただけたら、と思います。思いつきで始めた「ふくろう通信」、次はあるんだろうか...。

 

 (追記)Feltのアルバム『Forever Breathes the Lonely Word』がApple Musicに追加されました。よかったよかった。

Rain of Crystal Spires

Rain of Crystal Spires

  • Felt
  • インディー・ロック
  • ¥200
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いい子じゃない子たちの物語

 ここ最近、ちびまる子ちゃんばかり見ている。それも、けっこう昔のものを。さくらさんが亡くなった感傷からつい見ているのかなあ。現在放送されているアニメの絵のタッチも可愛いけれど、昔のタッチもまた素敵だ。色の質感とか、線や動きの感じとか。そして何より、登場人物の心情がかなりリアルだ。比べるのは失礼だけど、「サザエさん」にいじめっ子とか悪ガキって登場しないと思う。せいぜい、カツオが勝手に悪さして廊下に立たされるくらい。でも「ちびまる子ちゃん」では誰かが誰かを傷つけるシーンが結構出てくる。

 僕が印象に残った話は、二つある。一つは、「とくちゃんはお人よし」。学校に石鹸を持って行かなくてはならない日、小杉くんの牛乳石鹸が盗まれるという事態が起こる。牛乳石鹼を持ってきた人たちが並ばされ、犯人は誰かと探しているとき、とくちゃんは横で怯えている上田くんに気づく。上田くんが犯人なんだと分かった彼は「自分が盗みました」と、かばう。それからとくちゃんは泥棒呼ばわりされ、関係のないクラスメイトに耳をつねられたり頭を拳でぐりぐりされる。そのあと、上田くんが本当のことを告白してなんとか解決するんだけど、このへんはかなりリアルだと思う。被害者とは全然関係ない人が、善意を武器にして暴力をふるうところとか。「ひどいなあ」と思いつつも、どこか思い当たるふしがある。

 もう一つは、「お母さんの給食袋」だ。たまちゃんやとし子ちゃんが、まる子の給食袋の刺繍が可愛いと褒める。その話をお母さんにすると、三人おそろいの給食袋作ってあげようか、という流れになる。どういう図案にしようかと三人が考えているところへ、前田さんが入ってくる。「私も仲間に入れてよ」。「私の分は頼めないって言うの?」、そう言われてまる子はしぶしぶ前田さんの分もお母さんにお願いする。前田さんが提案した図案は、パンダの刺繍だ。お母さんは、夜中までかかって四人分の給食袋を仕上げる。...すごい。まる子はお母さんが作った給食袋を、自信満々で持っていく。「これは、前田さん」、前田さんにパンダの刺繍のついたそれを渡すと、彼女は淡々と言葉をつぶやいた。「何かこれ思ったより可愛くないね」。そして、くまの刺繍がついたまる子の給食袋と交換したい、と言い出す。悔しくて苛立ったまる子は、前田さんに「ばか!」と言い放ち、二人は喧嘩をする。このお話も、なんだかよく分かる気がする。前田さんの理不尽さも、まる子の怒りも、掴めるくらいはっきりと分かる。

 あと、「ちびまる子ちゃん」のクラスメイトは、いろんな人が出てくる。お金持ちとそうでない人、賢い子とそうでない子。よく食べる子と胃腸が弱い子。この物語には「いい子」があまり出てこない。卑屈だったり理不尽だったり、怠け者だったり。そうした子たちが一つのクラスに収まって、物語を紡いでいるところが、やっぱり面白い。もちろん、キートン山田のツッコミもね。


ハミングがきこえる

恐怖はかんたん

 ミスタードーナツでコーヒを啜りながら、僕は考えた。指はジョージ・オーウェルの『一九八四年』を捲っている。...恐怖とはなんだろう。恐怖について考え始めて一番最初に思い浮かんだのは、子育てのことだ。「食べ物を残したらもったいないお化けが出るよ」「勉強は子供の義務だ、勉強しないと将来ばかにされるよ」。人が一番敏感に感じ取りやすいのは、おそらく恐れだと思う。たぶん。

 ところで、NHKの「SONGS」に出演した小沢健二さんが、ある朗読をした。

blog.tanakamp.com

 ここで話された自動販売機の話が頭に残っていた。小沢さんは、日本にしか自動販売機が置かれていないことに対して「驚くべき」という表現しかしていない。驚くほど素晴らしいとも、驚くほど奇妙とも言っていない。今の僕は、どちらかというと奇妙な気がしている。たとえば、「こんなところ誰が来るんだろう」という場所にも自動販売機は佇んでいるけれど、たぶん中のお金が盗まれるなんてそうそうない。そこには秩序や、恐怖が流れている。地域に住むおっさんおばさんに対する恐怖や、もっとあやふやな〈世間〉への恐怖。田舎に住んでいると、なんとなくでも〈世間〉というのが根付いているのを感じる。夫婦は女性が男性の苗字に変わる、とか。どこかの誰かさんが考えた「ふつう」が〈世間〉を作り出し、それに反することに人びとは恐怖を覚える。そして〈世間〉に適応するように成長していく。はて、自販機泥棒が現れないのは「正常」なんだろうか。

 街を歩けばどこにも監視カメラが設置されてある。タクシーの中や、お店の中にも。カメラはどんどん小さくなって、目を細めないと分からないくらいになっている。僕らはいつも「見られている」という意識をもって行動する。それが起動していなくても、カメラの存在をちらりと確認しただけで、どこか背筋を伸ばしてしまう。見られている(かもしれない)という意識は、僕らを規制している。良くも悪くも。誰かの視線は今のあなたに向けられているかもしれないし、向けられていないかもしれない。

 僕がこうやって恐怖について語っているのも、何かしらの恐怖にそそのかされているからかもしれない。しかし、世の中に沢山の恐怖があるのはたぶん事実だ。原発に対する恐怖からたくさんのデマや風評被害を生んだし、日本が先進国でないことへの恐怖から「世界からこんなに称賛されている日本」みたいな安上がりな番組がゴールデンで流れている。僕や彼らが真剣な顔して訴えているあれこれは、本当に自分たちの心から純粋に溢れ出たものなのだろうか。不特定多数の〈世間〉が歩いてきた道を蟻のようにたどっているだけな気がする。それでも、考えずにはいられない。それは狭いお店に入ったときの気分と似ている。狭い本屋さんに一度入ってしまうと、なにか買わないとなかなか出て行きづらい。蛸壺のように、僕は閉じ込められる。

 はあ、店員さんにコーヒーをお代わりしてもらったのはいいけれど、ブラックを飲んでいると頭が痛くなってきた。本を閉じ、イヤホンを外す。店内ではルイ・アームストロングの歌が流れているようだ。扉を開けて外に出ると、空に低く漂う暗い雲が見えた。なんだか、雨の匂いがしそうだった。

田舎の生活

 村上春樹さんが孤独の比喩として使われていた「井戸」というのが、妙にしっくりきている。深い深い井戸の底で静かに生活しているイメージが、絵になる。ときどきそこからは人々の温かい声が聞こえてきて、胸のあたりがずきずきと痛むのを感じる。でもその痛みが成長の糧になると春樹さんも(たぶん)言っていたから、僕もつらさを肯定してみようと思う。

 今日、一人暮らしが再開された。昨夜はだいぶ憂鬱だった。先の見えない砂漠を前にしたような寂しさを感じていたけど、両親は普段通りがあがあと眠っていた。桑田佳祐さんのラジオを聞いたあと、明かりを消していつものように毛布にくるまった。朝、七時に目覚め、九時半の高速バスに乗り、二時間半揺られていた。駅のバスターミナルに着くとそこから路面電車に乗り、三十分ほど立って景色を眺めていた。大学前の停留所で降り、アパートまで歩いて行った。疲れた。

 ...懐かしい孤独だ。実家で暮らしていたときのものとは質の違う孤独。スタンドライトの柔らかい温もりを浴びながら、これを書いている。うあーー、一人暮らしってやっぱり疲れるなあ。肩のあたりが硬い。あと、キムチうどんが食べたい。うん。アパートは嘘のように静かで、虫の音しかしない。九月の半ばにしては今日は暑かったけれど、アパートに帰る途中でススキを見かけて、秋の情緒を味わった。奇妙な気候だと思った。

 心身共に疲れた日には、スピッツの音楽がしみわたる。音の一つ一つから滋養があふれだして、温泉に浸かっているような気分になる。最近は、「スカーレット」が本当にいい。赤いダッフルコートを着たマサムネさんが可愛い。そして何より、全ての音がやさしい。お茶漬けぐらいやさしい。


スピッツ / スカーレット

 次に「やさしいなあ」と感じるのは「冷たい頬」だ。...『フェイクファー』は基本やさしい気がする。アルバムジャケットからも、猫があくびしそうなくらいの温かさが伝ってくるくらいだ。


スピッツ / 冷たい頬

 MVがないけど、疲れたときに聴きたくなるのは、『三日月ロック』の「ガーベラ」、『オーロラになれなかった人のために』の「田舎の生活」、『花鳥風月』の「コスモス」...など。スピッツはもともとパンクだけど、井戸の底にまで行き渡る幸せもくれる。たぶん、新学期が始まってしばらくはスピッツに救われたり赦されたりするんだろう。新学期...、クラスの子としばらく会わなくてどう接してたか忘れて、ぎこちなかったなあ。なつかしいや。

田舎の生活

田舎の生活

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